映画と本の『たんぽぽ館』

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「擬宝珠のある橋 髪結い伊三次捕物余話」宇江佐真理

2017年10月15日 | 本(その他)
全編を通じ、高い満足度

髪結い伊三次捕物余話 擬宝珠のある橋
宇江佐 真理
文藝春秋


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宇江佐真理氏がデビュー以来書き続け多くのファンを獲得してきた
「伊三次シリーズ」最終巻。
文庫書下ろしの「月は誰のもの」も収録。

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いよいよ本当に、髪結い伊三次シリーズ最終巻です。
しかも本巻、章立ては3つ。
そして以前文庫描き下ろしとなった「月は誰のもの」が収録されていますが、
そちらはすでに読んでいます。
ということで、ファンにとっては寂しい本となってしまいましたが・・・。


表題「擬宝珠のある橋」では、
蕎麦屋の店を畳んで引退したある老人が、
生きる意欲をなくしすっかり弱ってきてしまった・・・という話を伊三次が耳にします。
人様のことに余計な世話焼きだと思いながらも、
伊三次は老人とその家族の幸せを願わずにいられない。
密かにあるアイデアを関係者に耳打ちしてしまいます。


伊三次ももういい年なんですよね―。
ついそう親しくない人のことでおせっかいを焼いてみたりする。
この巻はもうほとんど「捕物」は関係なくなって、
人情噺に終始しているようです。
けれど実際そういうところがこのシリーズの良さなのです。


最後の「青もみじ」では、
不破龍之進の奥様きいが、ある人のおせっかいを焼こうとする話ですが、
こちらはもう、手のうちようもなく切ないままの終わり方をします。
人生、いつもいつも思い通りには行きません。
それは晩年の宇江佐真理さん自身が痛いほどに感じていたことなのかもしれません・・・。


やはり残念ながら、伊与太と茜のその後については触れられないまま。
でも、こうした何気ない毎日が伊三次たちの上を通り過ぎてゆくのだろうなあ・・・
と思うと、何やらほっとするような気もしますね。


最後に、伊三次とお文さんのいちゃいちゃシーンを。

「お文、だいたい、お前ェも近頃は亭主を亭主とも思っていねェ態度をしている。
もう、おれに惚れていねェんだろ」
「ほ、惚れていねェって・・・」
(お吉)「やめてよ、お父っつぁん、恥ずかしい」
「わかった。おれはお父っつぁんと心から慕ってくれる者をこれから探すわ」
「お前さん。落ち着いて。わっちが悪うござんした。
惚れていないなんて、とんでもない。
わっちはお前さんと会ったときから惚れっぱなしでござんすよ。」
(お吉は「きゃあ!」と言って笑い転げる)



はい、どうもごちそうさまでした。宇江佐真理様。
長く楽しませていただいて、どうもありがとうございました・・・

<図書館蔵書にて>
「擬宝珠のある橋 髪結い伊三次捕物余話」宇江佐真理 文藝春秋
満足度・・・全編を通じ、計り知れません。