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映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

エイリアン

2017年10月27日 | 映画(あ行)
原点をさぐる



* * * * * * * * * *

最近「プロメテウス」と「エイリアン:コヴェナント」を見て、
そういえば「エイリアン」の初めの方は、確かに見て、未だに印象も深いですが、
随分前のことだし、ブログ記事にもしていないと気付いて、
この際初めから見てみることにしました。
で、第一作、1979年作品です。
考えてみたら本作、「プロメテウス」、「エイリアン:コヴェナント」とは
そのまま時系列でつながっているわけで、
これは案外タイミングの良い思いつきではないか!と、自己満足。


さて、ストーリーです。
宇宙船ノストロモ号はある星からの不思議な通信を受け、
調査のために立ち寄ることになります。
と言うか、この船は貨物船で乗組員は地球帰還のためコールドスリープに入っていたのですが、
この通信を受けたために臨時で予定外に目覚めさせられた、ということなのです。
なんでも、生物のいる可能性のある惑星のそばを通りがかったときには
調査をすること、という事前の取り決めがあったらしい。
なるほど・・・このあたりがいかにもコヴェナントの続きとしては納得がいきます。
予め、何者かの意図でこの星にたどり着いたということなんですね。
そう、この星こそが前2作の舞台となった、あの忌まわしい星。


探索船で降り立ったメンバーの一人の顔面に
不気味な生物が張り付いて意識を失ってしまいます。
検疫のために、彼は船内に入れてはいけないと
リプリー(シガニー・ウィーバー)は初めから警告していたにも関わらず、
他のメンバーが強引に船内に入れてしまいます。
やがて不気味な生物は自然に剥がれ落ち、当人は意識を取り戻す。
そして彼は猛烈な食欲を示しますがその最中、突如腹痛を訴えもがき苦しみ、
その腹中を食い破ってヘビのような生物が飛び出し、船内に隠れてしまう。
ここのシーンは、本当にゾッとさせられて、忘れられませんでした・・・。
このヘビ様の生物は更に脱皮をして、
私たちにおなじみのエイリアンの姿に成長します。
そして、一人また一人と犠牲者が出て、
最後はリプリー一人で対決をすることになる。



私はこの作品の後、様々な映画作品などでの女性の立ち位置が変わってきた、
と思っていました。
それまで、女性の登場人物はただ悲鳴を上げて男性の助けを待つだけの存在だったのですが、
本作の後から、自分で助かろうと自ら動くようになったのです。
そんな思いがあるところで、内田樹さんの「エイリアン・フェミニズム」という考えに出会いました。
以下、内田樹氏の受け売りです。


体内に卵が入り込み、成長し、最後に腹を食い破って出てきて、宿主を死に至らしめる
---というのは、妊娠と出産のメタファー。
生殖という女性の生物的宿命そのものに対する恐怖と嫌悪を表している。
このころ、ちょうどフェミニズムの興隆期。
まるで女は男が自己複製を作る道具であるかのような、それまでの父権社会の様相が表されていて、
そしてリプリーが一人反旗を翻している。
女性主人公が男性保護者に依存することなく、
ストレートな暴力に、ストレートな暴力で対処して勝利する。
闘い、自立する新しい女性像。
しかし、この闘う新しい女性のあり方は、
女性自身も不安だけれど、男性にとっても不安。
本作はこの双方の不安を投影している。


さて、「ストレートな暴力にストレートな暴力で対処して勝利」、
ということで、それではリプリーは男と変わらないということになってしまうのではないか・・・?
というところで、本作中には彼女の弱みも描かれているのです。
乗員の一人に力で組み伏せられてしまうところと、
終盤、猫を探しに行ってそのスキに脱出シャトルにエイリアンが乗り込んでしまう
というミスを犯すところ。
このあたりが、尚逃れられない女性としての弱み・・・。


このような内田樹氏の考え方に妙に納得してしまう私がいます。
たしかに本作、エイリアンをボコボコにしまくるのが男性だったらこんなにヒットはしなかったでしょう。
而してリプリーはフェミニズムの旗手となる。
このあと、物語の女性は男に頼らなくなるというのも当然のことなのでした。


それから私は思うのですが、本作でもアンドロイドが登場しますね。
「プロメテウス」と「エイリアン:コヴェナント」でも重要な位置を占めます。
アンドロイド、というよりも人工知能か。
この危険性をこの当時から言っているような気がします。
作中では、自己の欲望を満たそうとするある人物の意図を植え込まれたアンドロイド
ということになっていますが・・・。
人類にとってはエイリアン同様、計り知れない不気味な存在。
人工知能は、人のためにあるようでいて実は・・・
という不気味さが、裏テーマなのではないかと・・・。

エイリアン [Blu-ray]
トム・スケリット,シガーニー・ウィーバー,ベロニカ・カートライト,ハリー・ディーン・スタントン
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン (FOXDP)


<J-COMオンデマンドにて>
「エイリアン」
1979年/アメリカ/116分
監督:リドリー・スコット
出演:シガニー・ウィーバー、ベロニカ・カートライト、トム・スケリット、イアン・ホルム、ハリー・ディーン・スタントン
フェミニズム度★★★★★
満足度★★★★☆