空海の、唐における怪異との対峙
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沙門空海唐の国にて鬼と宴す 巻ノ1 |
夢枕 獏 | |
徳間書店 |
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盟友・橘逸勢らと共に、遣唐使として長安に入った若き僧・空海。
密教の真髄を「盗みにきた」と豪語する空海は、
ありあまる才で多くの人を魅了していく。
一方長安では、奇怪な事件が続いていた。
役人・劉の屋敷に猫の化け物が取り憑き、皇帝の死を予言したという。
噂を聞いた空海と逸勢は、劉家を訪れ妖猫と対峙することに。
その時から2人は、唐王朝を揺るがす大事件にかかわることになる―!
中国伝奇小説の傑作ここに開幕。
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先に見た映画「空海 美しき王妃の謎」をもっと楽しみたくて、
原作を読むことにしました。
全4巻。
かなりのボリュームですが、会話文が多いので意外とスルスルと読めてしまいます。
まずは一巻目を読んで、なるほど映画はかなりのダイジェスト版であった、
ということがわかります。
映画では、常に空海と行動をともにするのは白楽天でしたが、
本巻では橘逸勢(たちばなのはやなり)という、
空海と共に日本からやってきた青年です。
遣唐使の道のりというのは想像以上に厳しい。
この時の遣唐使は、日本を出て長安までたどり着くのに5ヶ月、
4艘出た船が2艘しか残らなかったと言います。
まさに留学も命がけ。
そして、留学期間は20年とされていたそうで・・・、
本当に生きて帰れたら儲けものというくらいのものですね。
空海はあまりにも感覚が常人離れしているので、
凡人の感情部分はこの同僚、逸勢さんが受け持ってくれています。
きらびやかな長安の都に心を踊らせながらも、
20年もここにいなければならないのかと、心もとなくもの寂しく思う・・・。
それが普通の感覚だと思うのですが、空海は、密教の真髄を学ぶことにまっしぐら。
望郷の念などどこ吹く風。
そして好奇心も人並み以上のようで、様々な怪異の噂を聞くと行って確かめずにはいられません。
本巻にはまだ、白楽天も楊貴妃も登場しないのですよ・・・。
足がかりがあるだけ。
けれど、遣唐使のこと、長安の都のこと、
まずはじっくりとこの世界観に馴染んでいく、そんなためのまずは一巻目。
空海の人となりもつかめてきましたが、これは映画の染谷将太さんのイメージそのままでバッチリでした。
図書館蔵書にて(単行本)
「沙門空海唐の国にて鬼と宴す 巻ノ1」夢枕獏 徳間書店
満足度★★★★☆