映画と本の『たんぽぽ館』

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僕と世界の方程式

2018年05月11日 | 映画(は行)

数学の才能が全てではない

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自閉症スペクトラムと診断されたネイサン(エイサ・バターフィールド)。
他人とのコミュニケーションが苦手ですが、数学に関してはずば抜けた才能を見せます。
彼を愛して止まずその才能を信じ続けていた父親は、ネイサンが幼い頃に事故死。
以後、母ジュリー(サリー・ホーキンス)が女手一つでネイサンを育ててきました。
母親としてもちろんネイサンの数学の才能は信じ、応援していますが、
食べ物の好みなど何かと気難しいネイサンに振り回され、疲れてもいるのです。

ジュリーはネイサンがまだ小学生の時に、高校の数学教師マーティン(レイフ・スポール)に個人指導を依頼。
やがてネイサンは国際数学オリンピックのイギリス代表チームの一員に選ばれます。
そして台湾でオリンピックのための合宿が始まる・・・。

ネイサンが合宿・・・って、大丈夫?
と、まるで自分の息子のことのように心配になってしまいました。
けれども、それは彼にとって大きな成長の場であるわけなのです。
数学の才能は確かにある。
けれど、同じような才を持った人は他にもいる。
ネイサンがそんな中でのトップというわけではないのです。
だからネイサンはこの合宿のレベルについていけるのかどうか、そういう不安も抱えています。
同じイギリスチームの中にも自閉症らしき少年がいて、彼は言います。

「自分は自閉症だけれど、数学の才能があることを誇りにここまで来た。
でも、ここで成功できなかったら、自分はただの変人だ・・・」と。

それはまた、ネイサンの心境でもあります。
けれど、実はネイサンの価値というのは数学の才能だけではなくて、
無二であるネイサン自身。

そんなことを彼は、ある女の子と知り合うことで気付いていく・・・。
こんなちょっと風変わりなネイサンともしっかり正面から向き合って理解しようとする女の子もステキですよね。
決して数学での成功物語ではない、というところが気に入りました。



<WOWOW視聴にて>
「僕と世界の方程式」
2014年/イギリス/111分
監督:モーガン・マシューズ
出演:エイサ・バターフィールド、レイフ・スポール、サリー・ホーキンス、ジョー・ヤン
少年の成長度★★★★★
満足度★★★★.5