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「西郷の首」伊東潤

2018年08月07日 | 本(その他)

武士の世の終焉

西郷の首
伊東 潤
KADOKAWA

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その首が、日本を変えた。ひたすらに熱く切ない本格歴史長篇!
ひとりは軍人に。ひとりは利通暗殺へ。
西郷の首を発見した男と、大久保利通を暗殺した男。
2人の加賀藩士は、親友同士だった――。
「維新」とは何だったのか?
武士の世の終焉を活写した、ひたすらに熱く切ない本格歴史長篇!

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伊東潤さんは、私にははじめての作家さんなのですが、
皆様のご推察の通り、NHK大河ドラマ「西郷どん」に関連して、
興味を持って読みました。
と言っても本作の主役は、幕末、加賀藩の二人の足軽、島田一郎と千田文次郎です。
二人は親友同士。
実在の人物で、事実をもとにしたストーリーです。


幕末といいえば脚光を浴びるのは長州藩、薩摩藩・・・。
薩長土肥などともいいますね。
会津藩などは逆の立場でスポットが当てられる。
そんな中で、加賀藩はあまり注目されないのですが、
その注目のされなさこそが、本巻のテーマと言ってもいいかもしれません。


尊皇攘夷思想に揺れる日本。
幕府側につくか、長州側につくか、各藩にとっては生き残りをかけた大きな決断。
加賀藩も内部でいろいろな論議があったのですが、
大藩故に保守的陣営が強かったという事情もあるのでしょうか・・・
どうにも優柔不断で、行動に踏み切るにも煮え切らない。
尊王を主張する有能な者たちを処刑してしまったりもしています。
最終的には長州藩につくことになりますが、それはもう、見え透いていたわけで・・・。
だから明治の世になっても、加賀藩からは一人も中央政府の要職につくことはなかった。
しかも新政府によって「士族」の生きるすべがどんどん失われていく。
そんなわけで各地で士族の反乱が起き、最後には西郷隆盛による西南の役があって、
いよいよ武士が武士として生きる道は絶たれてしまいます。

加賀藩の一郎と文次郎は親友同士ではありますが、
考え方の相違で進む道を違えていきます。
一郎はあくまでも反政府活動へ。
文次郎は時代の流れには逆らわず、それでも武士の魂をいだきつつ陸軍軍人に・・・。

二人がそれぞれに西郷隆盛と大久保利通の死に関わりを持つようになるというのも劇的。
思えば西郷と大久保こそも同郷の友人同士が道を違えてしまった、というのも運命的ではあります。
激動の時代、多くの人が生き方を変えなければならなかった。
あるものはその道半ばで命を落とすことになり・・・。
だからこそ、語り継がれる物語には力がありますねえ・・・。

作中、水戸藩天狗党の悲劇についても触れられていたのを嬉しく思いました。
私は朝井まかてさん「恋歌」でそのことを知ったのですが、
いろいろな歴史小説を読んでいくとまた、色々なつながりも見えてきて、面白いものです。

図書館蔵書にて
「西郷の首」伊東潤 角川書店
満足度★★★★★