映画と本の『たんぽぽ館』

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予兆 散歩する侵略者 劇場版

2018年08月21日 | 映画(や行)

概念の喪失とは・・・?

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映画「散歩する侵略者」のスピンオフとして制作された全5話のTVドラマを
劇場版として一本にまとめたものです。

映画「散歩する侵略者」についてはこちらをどうぞ。
→「散歩する侵略者」

「家に幽霊がいる」という同僚・みゆきの精神状態を心配した悦子(夏帆)は、
夫の辰雄(染谷将太)が勤める病院の心療内科へみゆきを連れていきます。
そこで医師は、みゆきの「家族」という概念が欠落しているというのです。
また同じ頃、悦子は夫の様子がおかしいことに気づきます。
どうもそれは、夫と同じ病院で働く新任外科医・真壁(東出昌大)と関係がありそうなのですが・・・。



人の心の「概念」を収集する侵略者。
単に宇宙人の地球侵略の話なら他にいくらでもあるのですが、
「概念」を盗むというのは本作ならでは。
「家族」の概念を盗まれてしまえば、家に一緒に住んでいる男が誰だかわからない。
それは父親で、生まれたときから一緒に住んでいるにもかかわらず、
見知らぬ人で、なぜ自分の家に我が物顔でいるのかがわからない。
まるで幽霊のような存在に思えてしまう。
う~む、なるほど、そういうことか。



不気味に笑いながら人を支配しようとする侵略者、東出昌大さんが、コワイ・・・。
真壁は他に「死の恐怖」などという概念を収集し、自らそれを味わい、楽しんだりもします。
が、彼はあくまでもここでは異端者。
人類と共存の兆しはありません。



そこで本編「散歩する侵略者」の方を改めて考える。
そちらでは「愛」の概念が鍵になっていました。
愛の概念は複雑で、さしもの侵略者も簡単には理解できない。
しかしそのことで、いつしか関係者たちの間に一種の共感が芽生えていく。
つまり、こちらの「予兆」があって、更に本編が際立つという作りになっていたのですね。
なんだか納得してしまいました。

私は思う。
「戦争」という概念を人類から取り去ってしまえば、世界は平和になるのだろうか・・・?

予兆 散歩する侵略者 劇場版 [DVD]
夏帆,染谷将太,東出昌大,渡辺真起子,中村まこと
ポニーキャニオン

<WOWOW視聴にて>
「予兆 散歩する侵略者 劇場版」
2017年/日本/140分
監督:黒沢清
原作:前川知大
出演:夏帆、染谷将太、東出昌大、中村映里子、岸井ゆきの
地球の危機度★★★☆☆
満足度★★★.5