映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

今宵、212号室で

2020年09月01日 | 映画(か行)

謎めいた一夜

* * * * * * * * * * * *

マリアとリシャールの夫婦は付き合って25年、結婚して20年になります。
ある日、マリアの浮気がばれてしまいます。
怒った夫と距離を取るため、マリアはアパルトマンの真向かいにあるホテルの212号室に宿泊。
そんなマリアの元に、20年前の若きリシャールが現れます!
そして彼のみならず、リシャールが結婚前に付き合っていた年上の女性イレーヌ、
マリアの浮気相手たちなどが次々に現れ、
不思議な一夜が繰り広げられます。

マリアはあまり罪悪感なく、次々といろいろな相手と浮気していたのですが、
夫リシャールは全く気づいていませんでした。
彼自身は結婚前に付き合っていた相手はいたものの、
その後はマリア一筋、浮気など考えたこともなかったのでした。
それだから、妻に裏切られていたことが、ひどくショックなのです。

その、落ち込むリシャールの姿が、マリアのいるホテルの部屋からよく見える。
そしてそこには20年前の若きリシャールが・・・。

誠に不可解、不思議な物語。
でもこれはSFでもファンタジーでもなくて、
マリアの心の物語なのだろうと思います。

最後の方でこんなセリフがありました。

「これは、セックスの話ではない。結婚の話だ。」

つまりどうもそこがテーマに迫るところなのでしょう。
セックスだけなら気軽にだれとでもできる。
だけれども、結婚は互いに長い時を過ごして、何かを守り育てるもの。
・・・それを愛といってしまえばロマンチックにすぎるけれど、
互いの思いやりとか忍耐力とか、そこで育まれるものは確かにありそうです。

でもまあ、セックスと結婚は別、と割り切ることができるかどうか、
それが本作を気に入るかどうかの分かれ目でありましょう。

それを割り切ってしまった何人かの男性俳優の末路を思うと、
やはりそう簡単に「別物」と思ってしまうのは危険ではないかと、私は思います・・・。
少なくとも、今の日本では・・・。

サツゲキにて

「今宵、212号室で」

2019年/フランス、ルクセンブルグ、ベルギー/87分

監督・脚本:クリストフ・オノレ

出演:キアラ・マストロヤンニ、バンサン・ラコスト、カミーユ・コッタン、バンジャマン・ビオレ

 

ストーリーのユニーク度★★★★☆

満足度★★★☆☆