謎めいた一夜
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マリアとリシャールの夫婦は付き合って25年、結婚して20年になります。
ある日、マリアの浮気がばれてしまいます。
怒った夫と距離を取るため、マリアはアパルトマンの真向かいにあるホテルの212号室に宿泊。
そんなマリアの元に、20年前の若きリシャールが現れます!
そして彼のみならず、リシャールが結婚前に付き合っていた年上の女性イレーヌ、
マリアの浮気相手たちなどが次々に現れ、
不思議な一夜が繰り広げられます。
マリアはあまり罪悪感なく、次々といろいろな相手と浮気していたのですが、
夫リシャールは全く気づいていませんでした。
彼自身は結婚前に付き合っていた相手はいたものの、
その後はマリア一筋、浮気など考えたこともなかったのでした。
それだから、妻に裏切られていたことが、ひどくショックなのです。
その、落ち込むリシャールの姿が、マリアのいるホテルの部屋からよく見える。
そしてそこには20年前の若きリシャールが・・・。
誠に不可解、不思議な物語。
でもこれはSFでもファンタジーでもなくて、
マリアの心の物語なのだろうと思います。
最後の方でこんなセリフがありました。
「これは、セックスの話ではない。結婚の話だ。」
つまりどうもそこがテーマに迫るところなのでしょう。
セックスだけなら気軽にだれとでもできる。
だけれども、結婚は互いに長い時を過ごして、何かを守り育てるもの。
・・・それを愛といってしまえばロマンチックにすぎるけれど、
互いの思いやりとか忍耐力とか、そこで育まれるものは確かにありそうです。
でもまあ、セックスと結婚は別、と割り切ることができるかどうか、
それが本作を気に入るかどうかの分かれ目でありましょう。
それを割り切ってしまった何人かの男性俳優の末路を思うと、
やはりそう簡単に「別物」と思ってしまうのは危険ではないかと、私は思います・・・。
少なくとも、今の日本では・・・。
サツゲキにて
「今宵、212号室で」
2019年/フランス、ルクセンブルグ、ベルギー/87分
監督・脚本:クリストフ・オノレ
出演:キアラ・マストロヤンニ、バンサン・ラコスト、カミーユ・コッタン、バンジャマン・ビオレ
ストーリーのユニーク度★★★★☆
満足度★★★☆☆