馬とともに歩む、荒野
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幼い頃母親が家出し、その日暮らしの父親と2人で生活している15歳の少年チャーリー(チャーリー・プラマー)。
近所の厩舎で競走馬リーン・オン・ピートの世話をするバイトを始めます。
そんなある日、父親が愛人の夫に殺されてしまいます。
さらに、競馬に勝てなくなったピートの殺処分が決まった事を知ったチャーリー。
チャーリーはピートを連れ出し、
唯一の親戚であるワイオミングにいるはずの叔母を探すため、荒野へ歩み始めます。
チャーリーの雇い主から、「馬はペットではない」と何度も言われていたチャーリー。
雇い主は馬に情が移ることを心配していたのです。
そう、この場合チャーリーにとってピートは、確かにペットではない。
たった一人の友人だったのです。
だからチャーリーは苦しい旅の間も、決してピートには乗りませんでした。
常に、共に歩くのです。
チャーリーが15歳、というところが微妙です。
まだ保護者を必要とする年齢で、
父親が亡くなったとなれば、本来なら施設に入らなければならない。
それを嫌ったチャーリーは、数年前まで母親代わりに彼を育ててくれた叔母を頼ろうと思ったのです。
叔母はチャーリーの父と大げんかをしたあげく出ていって、そのまま音信不通。
電話番号もわかりません。
犬くらいならともかく、馬を引き連れてのロードムービーというのも珍しい・・・。
そして、いかにも大変です・・・。
お金もない。
行く当てもかなり危うい・・・。
孤独の底にあるチャーリーは、いかにも切ない。
けれど、何が何でもやり抜こうという意思は確かです。
誰かに窮状を訴えて頼ろうともしない。
15歳だけれどもすでに強い孤高の魂を持つ。
しかし、彼にはさらなる過酷な運命が・・・。
後にチャーリーが泣くシーンでは、いかに彼がピートを心の支えにしていたのか、
ということがうかがえます。
そして、心が張り詰め、泣くことさえできなかった彼が、
ようやく泣くことのできる場所にたどり着けた、ということが納得できるのです。
ステキな物語でした。
<WOWOW視聴にて>
「荒野にて」
2017年/イギリス/122分
監督・脚本:アンドリュー・ヘイ
原作:ウィリー・ブローティン
出演:チャーリー・プラマー、スティーブ・ブシェーミ、クロエ・セビニー
孤高の魂度★★★★☆
満足度★★★★☆