異国の人と心を通わせること。それが世界のはじまり。
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今話題の、ベネチア国際映画祭で最優秀監督賞を受賞した黒沢清さんの監督作品。
テレビ番組の取材にレポーターとして参加している葉子(前田敦子)。
他のクルーと共にウズベキスタンを訪れています。
「巨大な湖の幻の怪魚を探す」というテーマの番組。
しかし、異国の地で撮影は思うようにならず、みな、いらだちを募らせていきます。
そんな中、一人町に出た葉子はかすかな歌声に導かれ、
美しい装飾の施された劇場に迷い込みますが・・・。
オール現地ロケ。
劇中劇ならぬ撮影風景の撮影という構造、どこかドキュメンタリー風でもあります。
その土地に過去も、おそらく未来も住み続けるであろう人々と、
表面のおいしいところだけをなぞろうとするテレビクルー、そして葉子。
こうした2極にある人々の軋轢があるワケなのですね。
言葉も全くわからず、葉子は街中を歩くのにも若干恐怖を感じています。
知らず、ハンディカメラを持ったまま撮影禁止区域に入ってしまい、
警官に声をかけられるのですが、思わず彼女は逃げ出してしまう。
後に警官は言います。
逃げるから追わなければならなくなってしまった。
ほんのちょっと話を聞きたかっただけなのに。
どこぞの独裁国家でもない限りは、外国だからと行ってどこも融通の利かない人ばかりというわけでもない。
同じ“人”同士、大抵のことは話せばわかる、通じ合う。
うん、大抵はそうなのだろうと思う。
そんな事件を通しつつ、いつしか葉子も見知らぬ外国の人々の中に入りこんで行くのです。
そしてこんな見知らぬ町にも実は昔、意外な日本とのつながりがあった・・・
という歴史を覗かせるあたりも心憎いですね。
ディレクターに染谷将太さん、ADに柄本時生さん、
カメラマンに加瀬亮さんという配役もなかなかステキでした。
<WOWOW視聴にて>
「旅のおわり世界のはじまり」
2019年/日本・ウズベキスタン・カタール/120分
監督・脚本:黒沢清
出演:前田敦子、染谷将太、柄本時生、アディズ・ラジャボブ、加瀬亮
異国の中の日本人度★★★★☆
満足度★★★★☆