映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「夢の守り人」上橋菜穂子

2020年09月09日 | 本(SF・ファンタジー)

花の世界で、永遠に夢を見ていたい・・・? 

 

 

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人の世界とは別の世界で花をつけ実をむすぶその“花”は、人の夢を必要としていた。
一方、この世をはかなんでいる者は、花の世界で、永遠に夢を見つづけることを望んだ。
いとしい者を花の夢から助けようと、逆に花のために魂を奪われ、人鬼と化すタンダ。
タンダを命をかけて助けようとするトロガイとチャグム、そしてバルサ。
人を想う心は輪廻のように循環する。

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上橋菜穂子さんの「守り人」シリーズ第3弾

呪術師トロガイの若い頃のことに触れられています。
そうした過去の因縁の絡むストーリー。

人の世とは別のあわいの世界で、人の夢を糧として花をつけ実を結ぶその“花”。
囚われてしまったものは、こちら側ではただ眠り続け、目を覚ましません。
ヨゴ皇国の一ノ妃。
タンダの姪。
そしてついには皇太子チャグムまでも・・・!

憂きこの世よりも、花の中でいつまでも夢を見ている方がいい・・・と、
そんな風に思うのはよくわかりますね。
この誘惑はかなり大きい。
しかし、さすがチャグムは第一作目でバルサに鍛えられただけのことはある。
タンダの力添えもあって、早々ここから抜け出して人の世に帰ってきます。

 

問題はタンダで、彼は魂と体が分離し、体は自らが傷つくことを少しも恐れない「鬼」のようになってしまう。
こんなタンダと闘わなければならなくなってしまうバルサ、なんともつらい・・・!

バルサが一作目で敵方だったものと協定を結んだりするのはなかなかオツです。

そしてやはり、「サグ」と「ナユグ」の二重世界が、
あるところで重なり合い影響し合うことが周期的に起こるというような、
このファンタジー世界の根底に流れているということが次第に明確になってきました。

まるでオスカルとアンドレのようなバルサとタンダの関係性もまた、私は大好きです♡

 

私は、トロガイはなんとなくジブリアニメに出てくる魔女めいた老女のイメージを持っていましたが、
この軽装版偕成社ポッシュのイラストは、二木真希子さんが務めており、
スタジオジブリの原画担当をされていた方なんですね!! 
イメージぴったりのはずだわ・・・。

 

図書館蔵書にて

「夢の守り人」上橋菜穂子 軽装版偕成社ポッシュ

満足度★★★★☆