ストーリー展開のツナギのみごとさ
* * * * * * * * * * * *
広島での狩集(かりあつまり)家の代々の相続争いで、
過去をさかのぼるうちに、明かになった仕掛け人の存在。
さらに、汐路(しおじ)の父母たちの以外な意思が明らかとなり…!?
追加ページ有りで広島編、ついに決着! そして、新章スタートの必見の第4巻!
* * * * * * * * * * * *
本巻では広島の狩集家の話が決着し、
その後はテレビドラマにあった、記憶喪失の爆弾男のエピソードに繋がります。
ある雨の日、整くんが公園で濡れそぼっている男と出会う。
記憶がないというその男としばし話をするうちに、男は次第に記憶を取り戻し、
「どこかに爆弾を仕掛けたような気がする」と言い始めます。
それまでの会話から、その爆弾の仕掛けられた場所に気づく整くん。
いやはや、この男の会話の中にすべて「3」という数字が関わっているなどと、
じっくり読んでいるはずの私にも全然気がつきませんでした。
さすが整くん、恐れ入ります。
それにしてもこの後のストーリー展開のツナギの見事さにもまた、
私は恐れ入ってしまうのです。
この公園の現場から立ち去ろうとする整くんは、土手から転げ落ちてしまう。
病院に担ぎ込まれた整くんは、別に異常はないというのに、
検査のため無理矢理入院させられ、その夜となりの病床の老人から謎めいた話を聞かされます。
その老人が残したのが「自省録」という一冊の本。
また、この病院に張られた手描きポスターに、明らかな誤字があるのに気づいた整くんは、
それが暗号となっていることに気づき、病院の温室を訪れることになります。
そこでも一つの事件を解決した後、また新たな暗号らしき数字を発見。
その暗号は、「自省録」の本がなければ解けないものなのでした・・・。
小さな「謎」はそれぞれ独立していながらも、絡み合って大きなストーリーを構成していく。
この運びの見事さ。
スバラシイ。
本巻で気になる整くんのセリフ。
「僕は死んだら何もなくなるんだと思っています。
眠るのと同じ感じでただ夢も見ないし2度と起きない。
何もかもなくなる。
つらいのも苦しいのも恨みもなくなる。
ちょっと悔しいけどそうだったらいいなと思うし、そうあってほしいです」
この思いは、誰もが同じというわけではないと思うのです。
死んでからも持っていたい幸福な想い出や愛や・・・
そういうものを彼は持っていないのかなあ。
つらいことや苦しいことや恨みがましいこと・・・
そんなものばかりが彼にはあるのかもしれない、と思えてちょっと切ないです。
この巻は、整くんがやっとライカさんと対面したところで終わっていまして、
この先も分かってはいるのですが、楽しみです。
「ミステリと言う勿れ 4」田村由美 フラワーコミックスα
満足度★★★★☆