映画と本の『たんぽぽ館』

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劇場版 殺意の道程

2022年05月28日 | 映画(さ行)

非日常と日常ディティールの妙

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WOWOWのオリジナルドラマ「殺意の道程」全7話の再編集劇場版です。
WOWOWのドラマは割と見ているのですが、本作は見ていませんでした。

小さな会社社長が取引先社長・室岡(鶴見辰吾)の裏切りが原因で自殺します。
息子の窪田(井浦新)は、いとこの吾妻(バカリズム)とともに、室岡への復讐を決意。
キャバクラ嬢このは(堀田真由)、ゆずき(佐久間由衣)の協力を得て、
計画を練っていきます。

とまあ、サスペンスのようでありつつも、
バカリズムさんの脚本なのでそう単純ではありません。
極めて日常的なあるある会話が軸となって話は進行していくのです。

たとえば、殺人のための道具をホームセンターに買いに行く。
黒いニット帽、黒いジャンパー、包丁、ロープ、バール・・・
ニット帽に、変なロゴマークが付いていたりするのはどうなのか、とか。
穴あきの包丁ではダメなのか、とか。
ロープの太さや長さはどれくらいがいいのだろうと、
その場で首を絞める動作をやってみたりして。
しかし、これらをかごに入れてレジに行く前に気がつく。
これでは殺人を犯そうとしていることが丸わかりではないのか? 
そうだ、他のものも一緒に買って紛らわしてしまおう・・・。

つい笑ってしまいますが、実際その場になったらこんな風に考えるだろうなあ、
と、変な風にリアルでもあるのですね。
いや、殺害方法を決めてから買えばいいのに、とは思うけれど。

実際のサスペンスドラマではこういう場面は全くカットされているわけなんですね。
こんな、ちょっととぼけてユーモラスな進行ながら、
着々と実行準備が整っていきます。

殺人という非日常と、生活感あふれる日常のディティールがまぜこぜになり、
なんともステキな味わいになっています。

それでいて、終盤意外な展開があり、そしてラストはどんでん返し。
みごとなミステリに仕上がっている。
やられますねえ。
面白かった。

<WOWOW視聴にて>

「劇場版 殺意の道程」

2021年/日本/120分

監督:住田崇

脚本:バカリズム

出演:バカリズム、井浦新、堀田真由、佐久間由美、鶴見辰吾

 

日常感★★★★★

ミステリ度★★★★☆

満足度★★★★☆