しかし、ココロちゃんはメンタル強い
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葉崎FMで放送される「みんなの不幸」は、
リスナーの赤裸々な不幸自慢が人気のコーナーだ。
そこに届いた一通の投書。
「聞いてください、わたしの友だち、こんなにも不幸なんです……」。
海辺の田舎町・葉崎市を舞台に、疫病神がついていると噂されながら、
どんなことにもめげない17歳のココロちゃんと、
彼女を見守る女子高生ペンペン草ちゃん、
周囲の人々が繰り広げる、泣き笑い必至の極上コージーミステリー!
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若竹七海さんの「葉崎シリーズ」、
先日読んだ「パラダイス・ガーデンの喪失」が10年ぶりということだったので、
本作を見てアレ?と思ったのですが、
2013年にポプラ文庫ピュアフルとして刊行されたものの、
新装版とのことで、納得です。
最後の一章のみ書き下ろし。
さて、本作に登場するココロちゃん、17歳。
家族も住むところも、もちろんお金もないばかりでなく、
その上あきれるほどの不運続きという特異な人物なのであります。
はじめ、葉崎FMに寄せられたココロちゃんの友人の投書で、
ココロちゃんのことが紹介されたのですが、
それで彼女のことが評判を呼んだのです。
終盤の方で、わざわざ本文にココロちゃんの不幸ぶりが要約されております。
本人もそうとうなオッチョコチョイであるうえに、
母親には捨てられる、
物置に住まわされて大麻を育てさせられて逮捕される、
キノコや貝で食中毒、
バイトはクビになる、
新しく清掃会社で働きだしたら掃除中の家が崩れる、
しまいには保険金目当てに6回も殺されかける・・・・
がしかし、なぜかこの不幸は本人だけにとどまらず、
彼女に関わり、彼女に危害を与えた人物もまた
巻き添えを食ったかそれとも呪われたかのように、
悲惨な出来事に遭遇するという、
それが「みんなのふこう」たる所以であります。
始めはミニFMのラジオ局、
次には病院内の貸本スペースを運営する「友の会」、
そして葉崎警察署、
視点を移しながらも、ココロちゃんのその後が語られて行くというのがとても面白い。
「パラダイス・ガーデンの喪失」に登場した二村警部補がここにも出てきているのもウレシイ。
楽しめました。
「みんなのふこう 葉崎は今夜も眠れない」若竹七海 ポプラ文庫
満足度★★★★☆