映画と本の『たんぽぽ館』

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ゴジラ-1.0

2023年11月14日 | 映画(か行)

知らず、のめり込む

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「ゴジラ」生誕70周年記念作品。
日本制作の実写ゴジラ映画としては30作目。
まあ、さして期待はしていなかったのです。
でもなぜか「ゴジラ」には思い入れがあって無視できない気がしてしまうのですよね・・・。
だがしかし、です。
私、本作のエンドロール時にはほとんど放心状態でした。
とにかくのめり込んで見てしまっていたなあ・・・と。

 

戦後間もない日本。
戦争により焦土と化し、何もかもを失ってゼロになってしまった日本。
そこへ追い打ちをかけるように、ゴジラが出現。
戦争を生き延びた名も無き人々が、ゴジラに対して生きて抗う術を探っていきます。

 

主人公となるのは、特攻隊員でありつつ生還した敷島浩一(神木隆之介)。
ようやく生家へ帰り着いてみればそこは瓦礫の山で両親も亡くなっていた・・・。
そしてまたそんなところに転がり込んできたのは、
赤子を連れた若き女性・典子(浜辺美波)。
二人がようやく人らしい生活ができるようになった頃、ゴジラがやってくる!!

南の海で暮らしていたゴジラが、水爆実験の放射能の影響を受けて巨大化、
および特殊攻撃能力を身につけて、関東方面に上陸。
ここの設定は定番です。

でも、まだ自衛隊が組織される前という隙間期間に舞台を設定したところがミソです。
そこが、国のお偉方が組織してその内部の人々のぐちゃぐちゃをテーマとした
先の「シン・ゴジラ」とは違うところ。

進駐軍を配慮して政府は動けない。
それで、民間の英知が集まります。
先の戦争で命拾いした自分たちが、今度は力を尽くさなければならない、と。

敷島は、特攻の任務から逃げ帰り、
そしてまた南の島でゴジラに襲われた際にもまた、逃げてしまった。
そのことがずっと大きな後悔となって、心の重りになり続けていたのです。
今度こそは何があっても逃げない。
そして今度は自分には護るべき者もある。
そう思いこの作戦に参加する敷島・・・。

敷島と典子さんのツーショットを見ると、
今にも敷島が「植物採集に行ってくる」と言い出しそうで、変な感じでした・・・。

博士役は、吉岡秀忠さんで、そのちょっと茫洋としてとぼけた感じが
またなんともいえずにいい。
変に神経質でなくてよいわー。

敷島の家のお隣の奥さんが安藤サクラさんなのですが、これがまたいい味出ています。
第一印象は思いっきりよくないのだけれど、実は・・・というところ。

 

結局の所、ひたすら一直線にゴジラとの対戦に向かって、
1人1人がそれぞれにできることに力を尽くし、そして勝利するという図式、
この単純さがよかったのではないでしょうか。

敷島の運命の最後のひねりも、やっぱりいい!! 
ご都合主義結構。
こうじゃなくては!!

ゴジラが怒り、攻撃態勢に入るとき、その様相が変わります。
まるでメカのようでもある。
その口から吐き出す熱線は、ちょっとした核兵器並み・・・。
作り込み過ぎではありますが、カッコイイです・・・。
迫力あります・・・。

常日頃、戦争はダメ、平和が一番といいながら、
こんな映像を面白く感じてしまうのはマズいのでは・・・
と、ふと思ったりもするのですが。

人の世の戦争には正義がない。
それぞれの立場によって相手こそが極悪人。
端で見ていても、もうどっちがどうとも言えなくなってきています。
でもゴジラの図式は単純明快。
襲ってくるものに対して、自分たちを守るために闘う。
それだけです。

でもそれが正義かというとそういうわけでもない。
ゴジラにだってゴジラの事情があってここにいるわけで・・・。

ラスト付近で水底へ沈み行くゴジラを見送って、
船上の人々が皆、ゴジラに向かって敬礼をするシーンがあります。
それこそが生きるものへの敬意。
そんなシーンにも心動かされました。

期待以上の感動作。
私は好きです。


<シネマフロンティアにて>

「ゴジラ-1.0」

2023年/日本/125分

監督・脚本:山崎貴

出演:神木隆之介、浜辺美波、山田裕貴、青木崇高、吉岡秀隆、安藤サクラ、佐々木蔵之介

 

迫力度★★★★★

ゴジラの正当性度★★★★★

主人公成長度★★★★★

満足度★★★★.5