孤独と絶望の淵から
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盲目の女の子とわは、大好きな母と二人暮らし。
母が言葉や物語を、香り豊かな庭の植物たちが四季の移ろいを、
黒歌鳥の合唱団が朝の訪れを教えてくれた。
でもある日、母がいなくなり……。
それから何年、何十年経っただろう。
帰らぬ母を待ち、壮絶な孤独の闇に耐えたとわは、
初めて家の扉を開けて新たな人生を歩き出す。
涙と生きる力が溢れ出す、感動の長編小説。
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盲目の少女とわが、大好きな母と2人暮らしをしていて、
母が言葉や物語をかたってくれるのが大好きという、ほのぼのとしたはなし・・・?
という風に始まる本作、しかし次第に様相を様変わりし、
なんとも悲壮な展開になっていきます。
え? 本当に小川糸さんの作品???と思いつつ。
けれど、どん底の先がスバラシイ。
ある時をさかいに、彼女の世界は一変します。
盲目であることに加えて、一般の人とは生活環境も異なり、
歩くことさえもままならなかった彼女が、光に向かって歩み始める。
そのきっかけも、切羽詰まってではありましたが、
誰かに助け出されたのではなく、とにかく彼女自身が踏み出した。
私はそこに意義があると思いました。
そこから先は周囲の人々の多大な助けがあって、
人並みの生活を取り戻すわけですが、
その先にまた、彼女自身の歩みがある。
終盤、彼女の目が見えないことは変わらないけれど、
彼女の世界は煌めき輝いているように思われる。
生きることの素晴らしさに彼女自身が気づき、
そして読者もそれに気づかされるのです。
ステキな物語でした。
「とわの庭」小川糸 新潮文庫
満足度★★★★★