開発者に責任がある・・・?
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ファイル共有ソフトWinnyの開発者が逮捕され、
著作権法違反幇助の罪に問われた裁判で、無罪を勝ち取った、一連の事件の映画化。
実は私、本作の最後の所を見るまでずっとフィクションだと思って見ていました・・・。
それほどに、ネットの事情に疎いというか無関心で、お恥ずかしいのですが。
知る人ぞ知る事件だったわけですね。
2002年、データのやりとりが簡単にできるファイル共有ソフト
「Winny」を開発した金子勇(東出昌大)。
その試用版をインターネット掲示板「2ちゃんねる」に公開します。
その後、それは瞬く間にシェアを伸ばしますが、
その裏で大量の映画やゲーム、音楽などが違法アップロードされ、
社会問題へと発展していきます。
違法コピーした者たちが逮捕される中、
開発者の金子も著作権法違反幇助の容疑で2004年に逮捕されます。
金子の弁護を引き受ける弁護士・壇(三浦貴大)は、
金子と共に警察の逮捕の不当性を裁判で主張。
しかし、一審では有罪判決を受けてしまいます・・・。
例えば、ナイフで人を殺害したときに、凶器はナイフで犯人はその使用者。
このときにナイフを作った人に何らかの罪があるかといえば、全くないですよね。
あくまでも使用した人の問題。
同じ考え方で、Winnyの開発者に著作法違反の責任があるかといえば、それはないでしょう。
単純に納得できる話。
しかしどうも、警察の真の意図は別の所にあり、
金子にあえて嘘の供述をさせた・・・と、本作では描いています。
警察が描いた筋書き通りに供述させること。
・・・こんなことでどれだけの冤罪が生まれたことか。
権力は恐ろしいものであります。
そしてまた、この金子という人物像がすごくユニーク。
とにかくコンピュータのプログラムを作るために生まれたというか、
そういう才能はピカイチなんですね。
ところがその他の部分がポンコツ。
お人好しというか人の裏の意図などには考えが及ばない。
作中でも自分の思いはプログラム言語でしか表現できない
というようなことを言っています。
東出昌大さんはこういう独特でちょっと現実離れしたような人物を、
実にうまく演じているのですが、
本作の最後に金子氏本人の映像があり、
なるほど、東出さんはこの方のことを十分研究し尽くした上で演じていたのだなあ・・・
ということがよく分かりました。
ところでこの金子氏は、最終的に無罪を勝ち取った後、
間もなく急死しているとのことで、実に残念なことでした。
そう思うと、なかなか感慨深い作品です。
本筋とは別に、警察内部での常態化した裏金作りを告発した
警察官(吉岡秀忠)の話も進行していきます。
特に接点もないように思われたこのサイドストーリー。
この内部告発はほとんど握りつぶされかけていたのですが、
Winnyによって警察内の書類が違法に流出したことで
証拠が露見した・・・という皮肉な落ち。
イカしてます。
<WOWOW視聴にて>
「Winny」
2023年/日本/127分
監督:松本優作
原案:渡辺淳基
出演:東出昌大、三浦貴大、皆川猿時、和田正人、木竜麻生、金子大地、
渡部いっけい、吹越満、吉岡秀忠
歴史発掘度★★★★☆
人物描写度★★★★☆
満足度★★★★☆