共感までに至らなかった・・・
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関ヶ原の戦から十年後、三成の娘・辰姫が津軽家に嫁ぐ。
藩主の信枚と睦まじい日々を送るも、
その三年後に家康の養女・満天姫が正室として当主のもとへ。
辰姫は上野国大舘へ移るが、のちの藩主となる長男を産む―
ふたりの姫による戦国時代の名残のような戦さを描く表題作ほか、
乱世の終焉を描く短編も収録。
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葉室麟さんの「津軽双花」。
帯のキャッチコピーには「女たちの関ヶ原」とあります。
独立した4篇が収められているこの本の冒頭が「津軽双花」。
関ヶ原の戦から13年後。
石田三成の娘である辰姫が津軽藩当主の正室となっていたところへ、
家康の養女・満天姫が嫁いでくる。
家の格からいって満天姫が正室となり、辰姫が側室とならざるを得ない。
この三成vs家康の構図を持って、「関ヶ原」になぞっているわけです。
でももちろんこの二人が実際に武器を持って対峙したりはしないのですが、
互いの立場を尊重しつつ、津軽藩の繁栄のためにいかに尽くすか、
そうした女の戦いを繰り広げます。
・・・でも私にはなんだかピンとこない。
どうも立派すぎると感じてしまいます。
葉室麟さんの小説中の武士は凜として美しい。
そのことは揺るぎません。
武士としての矜持というのは、つまり「壮絶なやせ我慢」なのではないかと思ったりします。
でも女は・・・。
ここでは武家の女ですが、もちろん女にも意地も誇りもあります。
そして少しのやせ我慢もするけれども、
それは決して「壮絶なやせ我慢」ではないような気がする。
男性は社会の中の自分の位置が生きるすべて。
だからこそ「壮絶なやせ我慢」もする。
切腹なんかその最たるもの。
でも女性はそうではないのではないか・・・と、いうのが私の思いです。
だからここに出てくる女性たちにはどうも共感を得られない。
他には巻末の「鷹、翔ける」は、
明智光秀が信長を討つに至った理由が中心にストーリーが進みます。
まさに今、タイムリーに興味深いところです。
でも主役は光秀自身ではなくて、彼に仕える斎藤内蔵助。
彼の主筋は美濃の土岐家であることが大きな関わりを持ちます。
いずれも関ヶ原前後の歴史物語。
様々な登場人物も著名な人物ばかりなので興味深くはありますが、
表題作以外はちょっとした短編なので、食い足りない感じです。
「津軽双花」葉室麟 講談社文庫
満足度★★.5
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