隣あう家族の抗争
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ちょっと珍しいアイスランド作品。
閑静な住宅地で暮す老夫婦が、隣家の中年夫婦からクレームを付けられます。
老夫婦の庭にそびえ立つ大きな木が、
隣家のポーチの日差しを遮るので、日光浴ができないというのです。
そのことがきっかけで、この二組の夫婦はいがみ合うようになり、
身近で起こる不審な出来事もすべて隣家の嫌がらせと思い込むようになります。
また老夫婦宅に、妻から追い出された息子が戻ってきて、
さらにやっかいなことに・・・。
両家の諍いは次第にエスカレートして・・・
特にここに出てくる老婦人が最も凶暴(?)。
実は詳しくは説明されないのですが、ここの長男が行方不明になっていて、
おそらくすでに亡くなっていると皆は認識しているようなのです。
しかし、この母だけは息子は生きていてきっと帰ってくると信じている。
そんなことのストレスから、若干精神を病んでいるようです。
そんな訳なので、この家でかわいがっていた猫の姿が見えなくなったとき、
彼女は猫は隣家に殺されたに違いないと思い、
その復讐として、隣家の犬をさらい・・・。
ここのところがあまりに残酷でショッキングでした。
一方隣家の妻は不妊治療をしていて、これまたストレスをため込んでいる。
つまりこの両家の諍いは、どちらも妻が主導。
夫は妻に言われてやむなく・・・という感じだったのが、
次第にこちらも感情がエスカレートしてきます。
最後には、スプラッタまがい、血みどろの抗争が・・・。
こうなると逆に笑ってしまいたくなりますが。
それと、妻に追い出された老夫婦の息子の方も、
次第にこれは妻の過剰反応ではないかと思えてきます。
確かにナサケナイ夫ではあるけれど、
即座に離婚しなければならないことだろうか、と。
結局、女たちがストレスをため込むとろくなことにならない
という話であったのかもしれません。
でもこんなストレスはどこにでもありそうな気もする。
現代が普遍的に抱える生きにくさでしょうか。
私、本作を見ながら別のストーリーを思いついてしまいました。
老夫婦の長男は、実は母親が殺して、あの木の下に埋めたのです。
母の長男に対する期待が大きすぎて、長男が反発して争いになったのでしょう。
だから母親は、あの木にはよその人に近づいて欲しくなかった、
というのがそもそもの事情。
母親が病的なまでに心理状態が良くなかったのも、うなずけるではありませんか・・・!!
<WOWOW視聴にて>
2017年/アイスランド・デンマーク・ポーランド・ドイツ/89分
監督・脚本:ハーフシュテイン・グンナル・シーグルズソン
出演:ステインソウル・フロアル・ステインソウルソン、エッダ・ビヨルグビンズドッテル、
シグルヅル・シグルヨンソン、ソウルステイン・バックマン
諍い度★★★★★
薄ら寒さ★★★★☆
満足度★★★.5
本作においては、さっさと木の枝を払ってしまえばよかったのですよね。
不和の芽は早いうちに積まなきゃダメ、ということかもしれません。
どこまで行っても穏やかな生活ななさそう、救いがないような話のようで、どうすれば良かったのでしょうか?