映画と本の『たんぽぽ館』

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「シリーズここではない★どこか③ 春の小川」 萩尾望都

2011年04月15日 | コミックス
人の心を癒すのは、やはり人の心

ここではない★どこか 春の小川 (Flowersコミックス)
萩尾 望都
小学館


             * * * * * * * *

待望の第3巻が出ました。
萩尾望都さんの短編集ですが、
お馴染みの登場人物たちのその後も描かれています。


「水玉」、「シャンプー」、「海と真珠」と続く
舞(マイ)と夜羽根(ヨハネ)のシリーズ。
派手で軽い夜羽根に翻弄される舞の心情が、初々しいですね。
でも、こんな風に内気でお堅い少女は、
まあ、私の様なオバサンにとっては、とても身近です。
内気で自信のない(?)遠い昔の自分の少女時代を思い起こすような気がして・・・。
「好きだ、かわいい」と、彼女をなんのてらいもなく
オモチャのように扱う夜羽根に思わず舞はビンタ。
「あなたのことを今キライになりました!」
身の程知らず、王子に恋をしてしまった人魚。
それが舞なのです。


「百合もバラも」では、生方ご夫妻、奥様がご懐妊。
産めば息子サトルとは15歳離れた子供ということになるけれど・・・。
二人は相手が
「タタミに両手をついて頼むから、産むことにした」
というのをオマジナイにすることにします。
実際、いい年をして子供を作って・・・などと、世間の人は無責任に言いますよね。
その家の事情は当人にしかわからないもの。
細々そんなことを説明するより、こういう説明をする方が簡単、
と割り切ることにしたわけです。
何だか結構リアルな話です。
母の妊娠を聞いた思春期の娘と息子が、
ポッと顔を赤らめるところが微笑ましい。
・・・ということはこの先赤ちゃんの誕生のシーンがあるのでしょうか。
それもまた楽しみですね。


表題の「春の小川」は、
小学校6年から中学生になろうとする光(コウ)が、
母親を亡くし、その死をなかなか受け入れられない状況を描いた作品。
一番身近にいた絶対的な存在を亡くすというのは、
大変な喪失感を伴うものなのでしょう。
それを現実のこととして受け入れられない光は、
時々母の姿を見、会話を交わす。
満開の桜の下、卵色の着物を着た母親の姿が心に残ります。
彼が現実を受け入れるきっかけは、友人の言葉でした。
悲しみの共有。
人の心の痛みを癒すのは、やはり人の心なのですね。
母の死を語り、初めて涙を流す光。
涙は心の解放にとって必要なのだなあ・・・。

「シリーズここではない★どこか③ 春の小川」萩尾望都 小学館fsコミックス


満足度★★★★☆



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