映画と本の『たんぽぽ館』

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恋妻家宮本

2018年03月12日 | 映画(か行)

2人だけに戻った夫婦に

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一人息子・正が結婚し、家を出たため、
夫婦二人きりとなった洋平(阿部寛)と美代子(天海祐希)。
2人は大学時代に出来ちゃった婚で結婚したため、
50歳にしてはじめて夫婦二人きりの生活を送ることになります。
そんなある日、洋平は美代子が隠し持っていた離婚届を見つけてしまい、激しく動揺します・・・。
果たして妻の真意は・・・?

息子が家を出た日、美代子はある提案をします。
もうお互いに「お父さん」「お母さん」と呼ぶのはやめにしよう。
名前で呼びあうことにしよう、と。
ああ、本当に。
我が家など未だにそうなので、どこかできっぱりけじめをつけるべきだなあ・・・などと思った次第。
でもこんな風にきちんと口にできる美代子さんはステキです。



さて、本作ではファミレス風景が多用されています。
大学時代の洋平(工藤阿須加)と美代子(早見あかり)が座っていた席に
現在の2人がまた座っていたりする。
中学校教師の洋平は優柔不断で、
盛りだくさんのファミレスのメニューの中から一品を決めるのがすごく苦手。
それは若い頃も今も同じ。
一方妻はしっかりもので、これまで家庭を守り通してきましたが、
一人息子がいなくなって、その心境はなんとなく想像がつきますが・・・。



洋平は学校の生徒には「教師に向いていない」と言われ、
妻からは「夫に向いていない」と言われてしまい、
また激しく落ち込むわけですが・・・。
けれど、相手に気持ちを言葉で伝えようとしてもなかなか言うことができないし、
言葉が見つからない。
そこで洋平は彼の唯一得意である「料理」を使うのです。
相手のことを思って作る調理には、心を溶かす魔法があるようです。
キザな言葉よりも、できる範囲での何かで心を伝えようとする、
そういうのもいいですね。
でもやはり、最後は言葉だ。
駅のホームのあちらとこちらで話を始める2人、
停電の待合室で、何故かろうそくを取り出して火を灯し、本音を語り始める2人。
電気がついた時には、2人だけだと思っていたのに周りに人がいて
聞き耳を立てていた、というのもおかしい。



そして本作で使われる吉田拓郎の「今日までそして明日から」は、
私も好きな曲なのでまた感慨もひとしお。
エンディングで皆さん勢揃いでこの歌を歌うシーンもいい。


子どもが独り立ちしたのを機会に、夫婦関係を見直してみるのはいいことだと思います。
それぞれがどこか我慢して自分らしさを置き去りにしてきたならば、
ここからそれぞれのやりたいことを始めるのもいいでしょう。
そんな時、同じ道ではないにしても一人で始めるよりも、
傍らにもう一人いるほうがいいのではないかな。

恋妻家宮本 DVD
阿部寛,天海祐希,菅野美穂,相武紗季,工藤阿須加
東宝



<WOWOW視聴にて>
「恋妻家宮本」
2017年/日本/117分
監督:遊川和彦
原作:重松清
出演:阿部寛、天海祐希、菅野美穂、工藤阿須加、早見あかり

共感度★★★★★
満足度★★★★☆



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