新鮮なうちに読むべきだった・・・
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戦争、原発、経済格差…。
さあ、この国は沈没か?
どうなんだ?
いま何が起こっているのか。
その時々のトピックスを関連書3冊をベースに論じる、47の同時代批評。
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「うしろ読み」ですっかりなじんでしまった斎藤美奈子さんの本。
題名につられて読みました。
この本は2006年~2015年にかけて、著者がいくつかの雑誌に連載した時事評論をまとめたもの。
その時々のトピックス関連図書を読み解きつつ、語られています。
各所で、「うん、その通り、よくぞ言ってくれました」というところはあるものの、
やはり今となってはいかにもネタが古い。
こういうのは、やはり新鮮さが命という気はしました。
そしてまた、せっかくこのときに著者がこのような意見を述べているのに、
結局それはなおもそのまま進行していってドツボにはまっているなあ・・・
と今にして思うところも多くて、なんだかむなしくなってしまうことも。
まあつまり、やっと今頃になってこの本を読んでいる私の責任であります。
そんな中で、特に気になった話をいくつか・・・
★地方再生のこと
これまでの地方再生は、そこを訪れる客の目線だったけれど、
そこを住民の目線にして、住宅と商業施設が微妙に混在するコンパクトな町へ。
いわゆる“シャッター商店街”への対策ですね。
★ヘイト・スピーチのこと
ヘイト・スピーチとは、「嫌いなものを嫌いと言う」ことではない。
ヘイト・スピーチは「マイノリティに対する差別であり攻撃」である、と。
だから表現の自由とは別物。
そう、ここのところをはき違えてはいけませんね。
★朝ドラのこと
NHK朝ドラマについて、
朝ドラのヒロインは毒気を抜かれ、小骨を抜かれ、時には背骨まで抜かれて
かわいげのある天然キャラクターに作り替えられる。
「生意気な女はあかんで~」「男社会のルールを壊す女はあかんで~」という暗黙のメッセージ。
何年も何年もこういうドラマを見続けてきたことが日本人の意識、
とりわけ男女平等意識にどう影響したか。
そこで、斎藤美奈子さん、今期のドラマ「スカーレット」をご覧でしょうか?
キミコさんはウーマンリブもフェミニズムの理念もなしに、
ただ個人としてやりたいことを、男社会のルールも無視してやり遂げています。
やっと、朝ドラも前進していますよ~。
ただし、そのことで別の大切なものを失う・・・
というリスクを負うのは、やはり警鐘なのかな?
私は、日本人の男女平等意識を前進させないのは「サザエさん」に
大きな責があると以前から思っています。
★東日本大震災と福島原発のこと
本巻には、この時期に書かれた文章が多いのです。
あのときの私たちの重苦しい気持ちが蘇ります。
しかし、あれからまだ10年に満たないというのに、
なんとあのときの気持ちがきれいさっぱりと風化してしまっていることか。
当時、震災前と震災後、日本の歴史の大きな転換点になる・・・
などと言われたものなのに今となってはその言葉がむなしい。
図書館蔵書にて
「ニッポン沈没」斎藤美奈子 筑摩書房
満足度★★★.5
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