逆玉の輿のはずが・・・
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小さな楊枝屋の四男坊・鈴之助は、
大店の仕出屋『逢見屋』の跡取り娘・お千瀬と恋仲になり、晴れて婿入り。
だが祝言の翌日、大女将から思いもよらない話を聞かされる……。
与えられた境遇を受け入れ、陰に陽に家業を支える鈴之助。
〝婿どの〟の秘めた矜持とひたむきな家族愛は、
やがて逢見屋に奇跡を呼び起こす。
直木賞作家、渾身の傑作人情譚!
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時々読む時代物、なんだか心がほっこりします。
小さな楊枝屋の四男坊・鈴之助が、
大店の仕出屋「逢見屋」の跡取り娘・お千瀬と恋仲になり、
婿入りするというところから始まる本作。
通常、そこまでが物語になるのですが、
本作はそこからがスタートです。
実家の楊枝屋では跡取りなどとてもなれないのですが、
大店の跡取り娘の婿となればもう、言ってみれば逆玉の輿。
大好きなお千瀬と夫婦になれて、その上、大店の婿となったら幸せすぎるくらい。
・・・と、思っていたのです。
祝言のその日までは。
けれど、その翌日、鈴之助は厳しい現実を突きつけられる。
この家は代々女が家督を継ぐしきたりとなっていて、
男は商売に口出しはできない。
何もするな、というのが婿に与えられた役割・・・。
鈴之助はいくら何でもそれを「楽ちん」と言って喜ぶほど
お気楽な性格ではありません。
店の大女将(祖母)と女将(母)、そしてお千瀬が店を切り盛りする中、
女将の夫(義父)と鈴之助は、
なんとも所在なく肩身の狭い思いで日々を過ごすことになるのです。
けれども、鈴之助は持ち前の人好きのする性格で、
人と人を結びつけ、逢見屋の家族関係や周囲の人々を変えていく・・・。
なぜか逢見屋に徹底して悪意を向ける人物の存在があったりして、
スリリングな部分もありながら、ほっこりする江戸の人情譚。
心地よい読書を楽しみました。
「婿どの相逢席」西條奈加 幻冬舎文庫
満足度★★★★☆
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