珠玉
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名作文学を読みやすくマンガにするという企画は1960~70年代にはおなじみでした。
紫式部、アンデルセン、グリムといった世界中の作家の名作を原作に、
昭和時代から多数生み出されてきた名作文学マンガの作品群から、
選りすぐりのコラボレーションを選出します。
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名だたる少女漫画家が描く、名作文学のアンソロジー。
私、本巻の広告を見て、これを読まずにしてなんとしよう!!と思い、
即購入してしまいました。
私のような年代の者にとっては、まるで夢のようなラインナップです。
収録作は・・・
萩尾望都×アンデルセン「白い鳥になった少女」
水野英子×グリム「サンドリヨン」
牧美也子×紫式部「花陽炎 (源氏物語)」
美内すずえ×樋口一葉「たけくらべ」『ガラスの仮面』作中劇より
坂田靖子×ペロー「お妃と眠り姫」
文月今日子×ルイ・エモン「白き森の地に」
山岸凉子×グリム「ラプンツェル・ラプンツェル」
佐藤史生×ボーモン夫人「美女と野獣」
私の大好きな方ばかりということもあって、大半は読んだことのある作品なのですが、
でもよくぞこの豪華メンバーを集めてくださいました!!と、
この企画に拍手を送りたくなります。
特に、美内すずえさんの「たけくらべ」は「ガラスの仮面」の劇中劇のシーンです。
北島マヤが美登利を演じています。
やってくれますねえ・・・。
そういう手もあったか。
感服。
それぞれのストーリーは原作を忠実になぞったわけではなくて、
作者が自由に想像の翼を広げて独自の解釈をしたり、
続きのストーリーを描いたりしています。
冒頭、萩尾望都さんの「白い鳥になった少女」は、
実は私の中でかなり印象に残っていた作品でした。
アンデルセン童話を元にしています。
虚栄心に満ちて他者を見下す傲慢な少女インゲは、
ある日大きな水たまりを渡ろうとするときに、靴を汚すのがイヤで、
持っていたパンを踏み石代わりにして歩いてしまいます。
するとそのパンを踏みつけにした姿のまま、
水中に引きずり込まれて、身動きできなくなってしまうのです。
水中で、自分が羽をむしって飛べなくなったハエにまとわりつかれたり、
不気味な生き物が張り付いてきたり・・・。
この気味悪いシーンが、結構当時の私に刺さったのですよね・・・。
しかしそれでも、このときのインゲは自分の行いを悔いてはおらず、
ちっとも哀しそうでもない。
ただ無表情にお腹がすいた、せめて体が動けばいいのに・・・などと思うだけ。
そしてまた、別に人を殺したわけでも、ものを盗んだわけでもないのに、
なんでこんな目にあわなければならないのかと憤っているのです。
それが、ついに彼女が自分の行動を悔いるのは、
インゲの運命を童話で知った子どもが、インゲを哀れんで流す涙を見たとき。
その涙がインゲの心を変えるのです。
不気味で、やがて美しい物語。
坂田靖子さんの「お妃と眠り姫」は、「眠り姫」の続きの話ということになっていまして、
眠り姫の嫁ぎ先のお妃様が、なんと「オーガ」だったという・・・。
つまり人間ではなくて、怪物なんですね。
オーガは人を食ったりする野蛮な存在なのですが、
坂田靖子さんが描けばなんともほっこりとユーモラス。
本作では、最後はちょっぴり哀しくもあるという、
まことに坂田靖子さんでしか描けない世界感の物語。
秀逸です。
そのほかも、読み応えたっぷり。
私には大切な一冊になりそうです。
「耽美とヒロイン 漫画化! 世界文学」 立東舎
※図書の家、山田英生編集
満足度★★★★★
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