映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

夜明けまでバス停で

2022年11月01日 | 映画(や行)

コロナ禍でさらけ出される社会矛盾

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日中はアトリエで自作のアクセサリーを販売、
夜は居酒屋で住み込みのパートとして働く三知子(板谷由夏)。
ところが、コロナ禍となり、仕事も住む家も失ってしまいます。
新しい仕事は見つからず、ネットカフェなども閉まっている。
行き場をなくした彼女がたどり着いたのは、街灯の下にポツリとたたずむバス停。
誰にも弱みを見せられない彼女は、
そこで一夜を過ごすホームレスとなってしまったのです。

一方、三知子の働いていた居酒屋の店長・千春(大西礼芳)は、
コロナ禍の厳しい現実と従業員の間に板挟み。
また、マネージャーである恋人・大河原(三浦貴大)の、
パワハラ、セクハラにも悩んでいます。

やがて、三知子は公園のホームレス達とも顔なじみになり、
もと過激派の爆発犯(柄本明)とも知り合い・・・。

本作、2020年11月に東京幡ヶ谷のバス停で寝泊まりしていたホームレス女性が
暴漢に殴り殺されるという実際の事件に着想を得ています。

三知子は、別れた夫が三知子名義のカードを使って多大な借金を作ったものを、
「私のカードだから・・・」といって、律儀に借金を返し続けていたのです。
だから、住み込みの職に就きアクセサリーを売っても、いつも生活はギリギリ。
その上実家の母が施設に入るとのことで、兄から費用を援助してほしいと言われ、
なけなしの20万円を振り込んでしまっていました。
そんな風に真面目に、コツコツと生きてきたつもりなのに、
あげくにホームレスになってしまった三知子。
なんとも理不尽です。

私はコロナ禍の中、そのような人たちがいるというニュースは見ていたのですが、
こんな風にその実態を突きつけられると、
いかに何も見ていなかったのかと思い知らされます。
本当にあの頃、こんな風に窮地に陥った人がどれだけいたことでしょうか・・・。

ロシアとウクライナの戦争の心配は毎日のようにするのに、
こうした人々の心配はニュースを見たときだけなのか・・・。
弱者には冷淡な社会。
自分もその社会の一員なのだなあ・・・。

 

ここまで落ち込んだ人生を描きながら、
本作はラストでちょっとした意趣返しがあります。
こんな風に、破れかぶれなのも悪くない。

作中、したり顔のユーチューバー氏が「ホームレスは社会の恥、ゴミだ」などと主張するのですが、
その役を演じているのが柄本佑さん。
そしてホームレスの一人が柄本明さん、というところがなんとも洒落ていました。

 

<サツゲキにて>

「夜明けまでバス停で」

2022年/日本/91分

監督:高橋伴明

出演:板谷由夏、大西礼芳、三浦貴大、松浦祐也、柄本明、筒井真理子、柄本佑

 

コロナ禍の現実度★★★★★

社会の歪み度★★★★☆

満足度★★★★.5



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