年齢も立場も混成の共同生活
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職を失い、自転車旅行の最中に雨に降られた青年・栗田拓海は、
年季の入った一軒の建物を訪れる。
穏やかな老人がかつてペンションを営んでいた「ムーンライト・イン」には、
年代がバラバラの三人の女性が、それぞれ事情を抱えて過ごしていた。
拓海は頼まれた屋根の修理中に足を怪我してしまい、
治るまでそこにとどまることになるが――。
人生の曲がり角、遅れてやってきた夏休みのような時間に巡り合った男女の、
奇妙な共同生活が始まる。
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かつてペンションを営んでいたけれど、今はもう営業していない、
そんな建物で共同生活を送る男女の物語。
1人は、この家の持ち主の老人。
そして、彼を頼ってきたらしき身体に障害のある老女。
この老女の介助のために付き添ってきたが、何かワケありらしき女性。
フィリピンから介護実習生として来ていた、若き女子。
そしてある大雨の日に迷い込んできて、しばし滞在することになる成年男子。
それぞれがこれまでの人生の歩みをそのまま続けられなくなっていた、という事情を抱えています。
いわばここは、そんな彼、彼女らのしばしの休憩の場所。
年齢も立場も違う人々が、共同生活をするというのには、ちょっと憧れます。
通常老人は老人としてひとまとめにされがちですよね。
介護の側からすれば効率がいいからなのでしょうけれど。
日常的な異世代交流があった方がいいのに・・・などと常々思うところではあるので。
でもこれはあくまでも「老」の立場からのことなのかな?
「若」の立場からすると迷惑なことなのかも・・・。
さてそれはともかく、息子に行きたくもない老人施設に送り込まれそうな老女。
罪を犯して東京から逃れてきているかも知れない女性・・・。
彼らの運命やいかに・・・?!
というスリルを持って読み進みましょう。
<図書館蔵書にて>
「ムーンライト・イン」中島京子 角川書店
満足度★★★☆☆
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