ほの暗く、耽美
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夢想家のお嬢様たちが集う読書サークル「バベルの会」。
夏合宿の二日前、会員の丹山吹子の屋敷で惨劇が起こる。
翌年も翌々年も同日に吹子の近親者が殺害され、四年目にはさらに凄惨な事件が。
優雅な「バベルの会」をめぐる邪悪な五つの事件。
甘美なまでの語り口が、ともすれば暗い微笑を誘い、
最後に明かされる残酷なまでの真実が、脳髄を冷たく痺れさせる。
米澤流暗黒ミステリの真骨頂。
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米澤穂信さんの本はあらかた読んでいるつもりでしたが、
平成20年に刊行されていた本作はまだ読んでいませんでした。
かなりブラックな味わいの強い短編集です。
資産家のお屋敷のお嬢様と、そのお嬢様に仕える貧しい家の出の娘、
と言うような構図で語られるストーリーが多い。
その味わいは、耽美。
そして甘美。
けれど、底辺に流れるのは残酷。
一種独特なムードに魅了されます。
5篇のストーリーはそれぞれにバラバラなのですが、
キーワードのように「バベルの会」というのが登場します。
良家の夢見がちなお嬢様方が集う読書サークル「バベルの会」。
ラストに収録される「儚い羊たちの祝宴」で、その「バベルの会」に襲いかかる運命!!
いやはや・・・、心震えます。
羊たちとはすなわちアミルスタン羊。
私は聖書か何かに登場する名前なのかと思ったのですが、
そうではなくて、アメリカの推理小説家スタンリイ・エリンの短編、
「特別料理」の中に登場する名前だそうで。
つまり、それと同じ内容です。
迷える子羊・・・。
<図書館蔵書にて>(単行本)
「儚い羊たちの祝宴」米澤穂信 新潮文庫
満足度★★★★☆
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