植物たちの生き残り戦略
身近な雑草の愉快な生きかた(ちくま文庫) | |
稲垣 栄洋,三上 修 | |
筑摩書房 |
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「名もなき草」の姿を愛情とユーモアに満ちた視線で観察した植物エッセイ。
本来か弱い生き物であるはずの雑草は、
さまざまな工夫により逆境をプラスに転換して、したたかに生きのびてきた。
彼らの個性的な暮らしぶりを知れば知るほど、
その人間くさい仕振りに驚愕し、共感する。
全50種の雑草に付けられた繊細なペン画イラストも魅力。
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野山の草花が好きな私、この本にも興味を持って開いてみました。
50種類の草花が取り上げられています。
これらは「雑草」と呼ばれ、実際は私のカメラの被写体にも
なかなかならないものばかりなのですが、
そんな普段気にもとめない草花一つ一つが、
それぞれに生き残るための綿密な戦略が組まれている、
ということで、なんとも驚いてしまう本なのでした。
例えば表紙絵にあるシロツメクサ。
シロツメクサは小さな花が下から順番に咲いていって、
全体としては一つの大きな花が咲き続けているように見える。
こうして花を目立たせて蜜蜂を呼び寄せるのだけれど、
蜜蜂が花の蜜を得るためにはちょっとした力と知恵が必要。
シロツメクサはハードルを高くすることによって、より優れたパートナーを得る。
この蜜を得る秘密を知った蜜蜂は気を良くして、
他の花ではなく、同じシロツメクサを飛び回るので、受粉に有利ということなのですね。
ちなみに、四つ葉のクローバーは、成長点が傷つけられて発生することが多いので、
道端や運動場などよく踏まれるところで見つかりやすいのだとか。
「本当の幸せとは踏まれて育つことをシロツメクサは語りかけている。」
なるほど~。
「オオブタクサ」は大量の花粉をあたりに撒き散らす、ということから、
アニメ「紅の豚」には「飛ばねえ豚はただの豚だ」という名セリフがあるが、
オオブタクサは完全に飛んでいる豚である、と。
「ツユクサ」のところでは、
ツユクサの花の青色と雄しべの黄色のコントラストは
あたかもサッカー日本代表チームの青いユニフォームと黄色い胸のエンブレムを連想させる、
として、雄しべのサッカー選手顔負けの連携プレーの解説に入ります。
そして「ホテイアオイ」のところでは、
ホテイアオイは生活排水などの窒素やリンを吸収し、水質浄化の働きがあるというところから
「風の谷のナウシカ」の腐海の植物が大地の毒素を吸収するという連想へ。
ホテイアオイの花の中央部の模様は、ナウシカのまとう伝説の青い衣に描かれた模様に似ている
と、私はそこまで確認できてませんが・・・。
というようなわけで、本作の面白さはもちろん植物たちの生き残り戦略の面白さではありますが、
著者の語り口に負うところも大きいのであります。
「身近な雑草の愉快な生き方」稲垣栄洋 三上修 画 ちくま文庫
満足度★★★★☆
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