映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

Arc アーク

2021年11月05日 | 映画(あ行)

限りなき生は喜びか?

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SF作家ケン・リュウの短編小説「円弧(アーク)」の映画化。
ケン・リュウさんはほんの少ししか読んでいない私ですが、
本作はその世界感をうまく再現していると思いました。

生まれたばかりの息子と別れ、放浪生活を送っていたリナ(芳根京子)。
あるとき、「ボディワークス」という仕事をしているエマ(寺島しのぶ)という女性と出会います。
ボディワークスというのは、最愛の人を亡くした人のため、
遺体を生きていた姿のまま保存できるように施術するもの。
リナはエマを師としてその技術を身につけていきます。
一方、エマの弟で天才科学者の天音(岡田将生)は、
ボディワークスの技術を発展させた不老不死の研究を進めていました。

時を経て30歳になったリナ。
リナと天音は研究が実った不老不死の処置を受け、永遠に年を取らない体となります。
そしてやがてこの技術は世界中に広まり、
不老不死が当たり前のものになっていく。

しかし、中には不老不死を拒み、老化しながら最後の時を過ごそうとする人々もいます。
90歳近いリナは、30歳の若さのまま、
そんな人々が集うとある島の施設で人々の世話をして暮していました。
リナはここで、とある老人と出会う・・・。

不老不死は人類の果てない夢ではありますが、
そんなことが実現するとしたら、人生の意味は
これまでとは全く違ったものになってしまうでしょうね。
中には果てしない生に倦み疲れてしまう人もいそうです。
本作中でも「自殺者が増加している」というようなことも言われていました。
どこまでも終わりのない道を思うと、逆に意欲がなくなりそうな気もします。
いつか終わりがあるからこそ、生は輝いたものになると言えるかもしれません。

本作、途中からモノクロになるのです。
それはリナが不老不死の体になってからのこと。
不老不死と引き換えに人生の彩りを失ってしまったかのようです。

人の生と死の意味を私たちに投げかける、印象深い作品。

 

「Arc アーク」

2021年/日本/127分

監督:石川慶

原作:ケン・リュウ

出演:芳根京子、寺島しのぶ、岡田将生、清水くるみ、井之脇海、小林薫、風吹ジュン

 

問題提起度★★★★☆

満足度★★★★☆



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