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658㎞、陽子の旅

2024年02月21日 | 映画(ら行)

夢を失った陽子のロードムービー

* * * * * * * * * * * *

42歳独身の陽子(菊地凛子)。
人生をあきらめほとんど引きこもり状態で日々を過ごしています。

そんな時に、かつて夢への挑戦を反対されて20年以上疎遠になっていた父の訃報を受けます。
いとこの茂(竹原ピストル)とその家族とともに、車で東京から故郷青森まで出発します。
しかし途中、サービスエリアで行き違いがあり、陽子は置き去りにされてしまいます。

スマホは故障中。
所持金は2000円程度。
人と話すのもやっとな陽子ですが、やむなくヒッチハイクで青森を目指すことに。
道中、様々な人と出会い、様々な出来事があって、陽子は変わっていきます。

東京から青森までの距離が658㎞ということですね。
いとこの車に乗っていれば何の苦労もいらなかったのですが、
はぐれてしまって連絡の取りようがない。
疎遠だとはいえ父親の葬儀に行かないわけにもいかない。

陽子は勇気を振り絞って、サービスエリアにいる人々に
途中まででもいいので、乗せてくれるように頼みます。
始めのうちは声を出すのもやっと。
トイレで、ことばの練習をするくらいです。

何人にもことわられながらやっと乗せてくれたのは一人の女性。
彼女はなぜこんなところでヒッチハイクをしているのか、問いたい様子でしたが、
なにしろ陽子はほとんどだんまりで、会話になりません。
結局、青森にはまだほど遠い場所で、車を降りることに。

さて、陽子は亡き父の幻影とともに旅をします。
それも20年以上前の若き日の父(オダギリジョー)。
物言わぬその父は、勝手に夢を見て飛び出していった陽子を
責めているようでもあり、慰めているようでもある。
その父への反発で、故郷に帰ることもなかった陽子。
その頃の父、つまり自分が今見ている幻影の父は、
ちょうど今の自分と同じくらいの年齢だったはず・・・。
父の思いを今さらながらに感じてしまいます。
せめて、火葬されてしまう前に逢いたい・・・と、彼女は思うようになるのです。

いろいろな人に助けられ乗り継ぎ・・・、
なかには酷い人もいて、ボロボロになりながらも、
陽子は進んでいきます。

結局、彼女を前へ進めたのは、良くも悪くも人々との出会い。
一人ではできないことも、人の助けを借りればなんとかなる。
そして助けを受け入れることが、自分を強くする・・・。

終盤、陽子は問われもしないのに自分の事情を運転者に打ち明けるようになっています。
感動します。

亡きお父さんがこんな陽子のことを見守ってくれたのかも知れませんね。

 

「658㎞、陽子の旅」

2022年/日本/113分

監督:熊切和嘉

原案:室井孝介

出演:菊地凛子、竹原ピストル、黒沢あすか、浜野謙太、仁村紗和、オダギリジョー

 

コミュ障度★★★★☆

成長度★★★★☆

満足度★★★.5



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