死者を悼む心は本物
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イラクの戦場から帰国し、内勤の任務に就いた海兵隊員マイケル(ケビン・ベーコン)。
イラクの戦死者リストの中に、チャンスという自分と同郷の若者の名を見つけ、
その遺体をワイオミングの家族の元に届ける任務に志願します。
本作は、チャンスの遺体が清められ、
飛行機や車で移動する際も十分に敬意を払われて両親の元に届けられ、
葬儀が行われるまでを丁寧に描いています。
通常は戦死者の護衛をするような立場ではないマイケルなのですが、
今は兵を送り出す側の身として、一度護衛を担当してみたいという思いがあったのでしょう。
実際、体験しなければわからないことですが、
マイケルはその一部始終を見届けることになります。
戦地からまずはアメリカの基地に送られた遺体は、
担当者により丁寧に清められ、また血や泥で汚れた遺品等もピカピカに磨き上げられます。
厳重に封印された棺は車や飛行機で国内を移動。
その間移送に関わった人々や、それと知った通りがかりの人々でさえも、
死者と護送のマイケルにも十二分な敬意を払います。
そんな様子に、マイケルは心を打たれ、なお一層敬虔な心持ちにさせられます。
そして私たちも・・・。
国のために命を捧げた若者。
彼と彼の行為・運命に人々は敬意を払い、悼み、祈りを捧げます。
美しく心洗われる光景です。
ではありますが、若干あまのじゃくな私は少し思うところもあります。
この若者は、生きているときにこんなにも人々から熱い思いを向けられたことがあっただろうか・・・。
生きているときはおざなりで、死んでからこんなに大事にされてもなあ・・・と、
まあ、死者は物思いはしませんが、もし彼の体から抜け出た魂があれば、そう思うかも。
本当は生きている人こそが大事ですよね・・・。
だから本作、結局戦争賛美と受け取る人もいるのだろうな・・・と。
私はそうは思いませんけれど。
ともあれ、死者を悼む人々の心は真実と思えました。
<Amazon prime videoにて>
「TAKING CHANCE 戦場のおくりびと」
2009年/アメリカ/79分
監督:ロス・ケイツ
出演:ケビン・ベーコン、トム・アルドリッジ、ニコラス・リース・アート、ブランチ・ベイカー
敬虔さ★★★★★
満足度★★★★☆
なんだかんだ言いながら、実はめちゃめちゃ感動して泣けました・・・
けれどやっぱり、もし亡くなったのが黒人だったらどうなのだろう・・・とか、色々考えてしまう事も多いですね。
アマゾンプライムで見ました。
ケヴィン・ベーコンの静かな演技が引き立ちましたね。
静かに戦争の無残さを見せてくれたように思いました。