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垣根涼介「君たちに明日はない」のシリーズに気を良くして、
この作品も読んでみました。
この作品は、大藪春彦賞、吉川英治文学新人賞、日本推理作家協会賞、
史上初の三冠受賞となった作品。
確かに、それも納得の力作です。
1961年、日本政府の募集により、多くの日本人がブラジルに入植しました。
しかし、彼らがたどり着いたその場所は密林。
募集要項に謳われていた灌漑排水設備や、入植用の家、開墾済の畑さえどこにも見当たらなかった。
移民たちは病でつぎつぎに命を落とす。
絶望と貧困・・・・・・。
苦難の果てに生き残った男たちが、日本政府に復讐を誓う。
これはそんな物語です。
このように、山崎豊子ばりに近代日本の歴史の暗部をえぐる重いテーマでありながら、
あくまでもエンタテイメントに徹しているところが、この本の秀逸なところ。
そして舞台は現代に移ります。
当時の移民で夢破れた老人、衛藤と山本。
それぞれ両親をアマゾンの奥地で亡くしたケイと松尾。
彼らは胸に誓います。
"俺たちは、日本政府に必ず吠え面を欠かせてやる-----。"
その行為はテロ活動ではありますが、彼らは人の命を奪おうとはしない。
最終目的は、今の日本に、かつての国と外務省が行った非情な行為を知らしめること。
この一点。
だから、世間にアピールするためにド派手なのです。
カッコイイのです。
私たちはこの犯罪がどうか成功するようにと、つい願ってしまう。
そういう痛快な物語となっています。
だから終盤、意外にも優秀な警察が犯罪の解明に向かいかけるところでは
ハラハラしてしまいます。
そんなこと気づかないでよ・・・、余計なことしないで・・・と。
1960年前後・・・。
日本はどんどん経済成長に向かうところですね。
夢を持ってブラジルに渡り、
しかし夢破れて生死の境をさまよい、また、国に帰るお金さえない、
そんな人たちは、祖国の豊かさへの変貌をどのように見たでしょう。
そんな無念さが、胸をえぐりますね。
この問題はテレビ番組などで見たような気はしますが、
真剣に考えたことはありませんでした。
知っておくべきことは実にいろいろあるものです。
さて、このストーリーにはかなり濃密な"色"もありまして・・・。
テレビ局の元アナウンサー、現在は記者の貴子。
そして、このテロ活動の実行犯ケイ。
この二人のやり取りが実にすごい。
しかし濃密でありながらも、カラッとしています。
このあたりがやはり情熱の国、ブラジルを感じさせますねえ。
ラストも、いいですよお♪
この男女の関係が「君たちに明日はない」に引き継がれているわけですね。
これも、二冊一気読みの面白さでした!
満足度★★★★★
いつもTBいただいていてありがとうございます。
私も、「君たちに明日はない」も含めて、ここのところこの著者に魅了されています。
ぐいぐいと読ませますよね。
そして登場人物に魅力がある。
・・・まあ、女でもそこそこのエロさはいやじゃないですよ。
今後ともまた、よろしくお願いいたします!
そしてエンターテイメントを極めた後半。
もう文句なしの作品。
自分が読んだ小説の中でも一ニを争う面白さだと思ってます(^-^)v
そしてちょっとエロいし(^m^:)