予算から見る忠臣蔵
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だれもが知る赤穂浪士の物語を「お金の面」から見てみようというユニークな作品です。
赤穂藩藩主浅野内匠頭(阿部サダヲ)が江戸城内で刃傷沙汰を起こしたということで、
即、浅野は切腹、藩は取りつぶし。
しかし、喧嘩両成敗のはずなのに相手方の吉良上野介はおとがめなし。
筆頭家老の大石内蔵助(堤真一)、さあどうする!!ということですね。
しかし、すぐに仇討ちをするということになったわけではないのです。
城はおとなしく明け渡し、その後なんとかお家復興の道を探ろうと大石は思っていたのです。
ところがその道は絶たれ、
おまけに世間はたきつけるように赤穂藩士たちの吉良への仇討ちを熱望している・・・。
そして、はやる藩士たちをもう止めようもなく
・・・という感じで討ち入りへ突き進んでいくわけですが。
さて、これまでの忠臣蔵ならそのまま話が続きます。
しかし本作に登場するのは、勘定方・矢頭(岡村隆史)。
彼は番方(実戦担当)はお金の使い方を知らない、と言います。
いや、使い方を知らないというよりも、「予算」についての認識がないというべきか。
どんな計画も予算の裏付けがなければ絵に描いた餅ということを知らない。
この気持ち、元経理担当の私としてはすごーくよくわかります。
お取り潰しとなった藩の藩士たちはその後どうなってしまうのか、ということについても、
勘定方がこれまで「何かの時のため」に、コツコツと余剰金を貯めておいたので、
藩士に退職金を出すことができた、などという話は
これまで聞いたこともなかったので感心しました。
そして結局、討ち入りに関わる経費は、亡き浅野内匠頭の奥方のお金を使った訳なのですね。
討ち入りの打ち合わせのための江戸への旅費、
藩士たちの江戸での住まいの家賃、
討ち入りの装備や武器・・・
何もかも先立つものがないとどうにもなりません。
どう考えても大赤字のところ、当初予定された討ち入り3月14日(浅野の命日)を
12月14日に前倒しすることで家賃等の経費が浮いたなどという話がまた、
すごくリアルに迫ってきます。
見せ所、いよいよ討ち入りの修羅場のシーンはありません。
しかしこの物語に、そこは必要ありませんね。
コミカルに描かれたこの物語、最後の悲惨な場面はみたくありませんもの。
岡村隆史さんの勘定方というのがユニークでステキな配役でした。
「蜜蜂と遠雷」で軽やかにピアノを弾いていたあの人(鈴鹿央士)が、
ここでは討ち入りをするなんてね・・・!
<シネマフロンティアにて>
「決算!忠臣蔵」
2019年/日本/125分
監督・脚本:中村義洋
原作:山本博文
出演:堤真一、岡村隆史、濱田岳、横山裕、荒川良々、妻夫木聡、鈴木福、石原さとみ、鈴鹿央士
歴史発掘度★★★★★
満足度★★★★☆
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