映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「龍神の雨」 道尾秀介

2012年03月24日 | 本(ミステリ)
反転の妙

龍神の雨 (新潮文庫)
道尾 秀介
新潮社


                 * * * * * * * * * *

「カラスの親指」で道尾秀介さんにクラっと来た私は、
今作も引き続き読んでみましたが、またやられましたね。
騙されまいと思いつつ、著者のミスリードに、ついはまってしまいました。


ここには2組の家族というか、兄弟が登場します。
事故で母を失い、継父と3人で暮らしている添木田蓮と楓。
両親を亡くし、継母と暮らしている溝田辰也と圭介。
どちらも、期せずして血のつながらない人を父と呼び、母と呼ばなければならなくなったという境遇に加えて、
その義父母が疎ましくてたまらない。
特に、蓮は継父に対して殺意すら抱いているのですが・・・。

ついに実行されてしまう殺人。
継母が実母を殺したのではないかという疑惑・・・。
辰也の仄暗い意志はどこまで行くのか・・・。

ううむ、やっぱり陰湿になってきた・・・
このストーリーに救いなんかありえない・・・、
と、本当にそう思ったのですよ。
途中までは。


ところが・・・!!
写真のネガが一瞬にして反転するかのように、事実が逆転していく。
この勢いが素晴らしい。


けれど今作、完全なるハッピーエンドとまでは行かず、
ちょっぴり苦さが残るあたりもさすがで、
それでこそ、「竜神の雨」の題名にふさわしいのです。


この結末について、解説で橋本満輝氏は言っています。
「沖縄のハブの話」
「クレーン車が切断した電話線の話」
「荒川の下流に流れ着いた男性の遺体の話」
唐突なエピソードと思われるこれらは、本では語られない良い未来への布石なのではないかと。
私も指摘されるまでもなく、そんな気がしまして・・・。
死体が発見されたのはむしろ僥倖。
死因がはっきりすればあるいは・・・と思うのですが、どうなんでしょう?
何れにしても、私たちは自分で想像をふくらませるしかないんですけどね。


それにしても圭介君は、お兄ちゃんよりよほど大人でした!

「龍神の雨」 道尾秀介 新潮文庫
満足度★★★★☆


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1 コメント

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Unknown (けん)
2012-03-25 01:46:36
TBさせていただきました。
またよろしくです♪
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