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「濱地健三郎の幽(かくれ)たる事件簿」有栖川有栖 角川書店

2021年11月21日 | 本(ミステリ)

不可思議な現象にも、合理的解決

 

 

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年齢不詳の探偵・濱地健三郎には、鋭い推理力だけでなく、幽霊を視る能力がある。
新宿にある彼の事務所には、奇妙な現象に悩む依頼人のみならず、
警視庁捜査一課の強面刑事も秘かに足を運ぶほどだ。
助手の志摩ユリエは、得技を活かして、探偵が視たモノの特徴を絵に描きとめていく―。
郊外で猫と2人暮らしをしていた姉の失踪の謎と、
弟が見た奇妙な光景が意外な形でつながる(「姉は何処」)。
資産家が溺死した事件の犯人は、若き妻か、懐具合が悪い弟か?
人間の哀しい性が炙り出される(「浴槽の花婿」)など、
驚きと謀みに満ちた7篇を収録。
ミステリの名手が、満を持して生み出した名探偵。
待望のシリーズ、第2弾!

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探偵・濱地健三郎のシリーズ第2弾。

幽霊を見る能力のある探偵が、奇妙な現象に悩む依頼人の体験を紐解き、
解決していく短編集。

幽霊が登場するとは言っても、さほど恐い感じはしません。
けれど、現実にはあり得ないことを題材としながら、
それでも様々な事柄が合理的に解決出来てしまう。
常よりも伸びやかな発想でストーリーが進むところが、
ちょっと楽しい感じがします。

 

「お家がだんだん遠くなる」の依頼人は、夜毎に自分の魂が幽体離脱をして空の高みに登り
やがて、どこか、いつも同じ所へ引き寄せられている感じがする、というのです。
幽体離脱して飛ぶ距離が次第に長くなっていて、
このままではまもなく帰れなくなってしまうのでは、と恐れているのです。
これはさすがにちょっと恐くてヤバい感じですね。
そこで登場したのが童謡の
「お家がだんだん遠くなる・・・今来たこの道帰りゃんせ・・・」
そういえばこの歌は、何やらもの悲しくて、
本作を読みつつ思いうかべると、なんだか本当に恐くなってしまうのでした。

 

ここの探偵事務所はどこかに宣伝をのせるでもなく、
電話帳にさえ載っていないのです。

けれどここの探偵事務所が必要な人には、なぜかどこかからここの噂が耳に入る。
例えば喫茶店で近くの人が噂をしているのが漏れ聞こえた、などと言うように。

こんな仕組みもミステリアスで、面白い。
このシリーズも波に乗ったという感じがします。
続編が出ればやっぱり読みたい!

 

「濱地健三郎の幽(かくれ)たる事件簿」有栖川有栖 角川書店

満足度★★★★☆

 



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