映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

PARKS パークス

2018年08月13日 | 映画(は行)

50年前、そして今の青春

* * * * * * * * * *

東京吉祥寺の井の頭恩賜公園100週年を記念して作られた作品。

井の頭公園の脇にある古いアパートにひとり暮らしをしている女子大生・純(橋本愛)の部屋に、
見知らぬ女子高生・ハル(永野芽郁)が突然訪ねてきます。
ハルは亡き父親についての小説を書くため、佐和子という女性を探しているといいます。
その佐和子が、昔このアパートのこの部屋で暮らしていたのです。
卒論のテーマを兼ねて、ハルを手伝うことにした純。
しかしようやく探し当てた佐和子の家で、二人は佐和子の孫・トキオ(染谷将太)から、
佐和子は少し前に亡くなったことを聞かされます。
でも、トキオは祖母の遺品の中から、オープンリールテープを発見し、二人のもとに届けてくれます。
トキオは音楽関係のバイトをしているので、
旧式のテープレコーダーの準備も怠りなく、三人でテープを再生してみると、
そこには、佐和子とハルの父たちによるラブソングが収録されていたのでした。
しかし、テープが劣化していて、それは途中までしか聞くことができません。
3人はその続きを自分たちで作ろうと、活動を開始します。

50年ほど前の出来事が私にはとても懐かしく感じられます。
オープンリールのテープレコーダー。
子供の頃、我が家で初めて購入したのがあんな感じのテープレコーダーでした。
佐和子たちの歌は懐かしのフォークソング調。
そんな50年前の井の頭公園と現在の井の頭公園が重なり合って、
とても素敵な雰囲気を醸し出しています。
豊かな緑と池の水の風景は、それだけで心が和みますしね。
現代の続きの歌は、トキオによるラップにもつながって行くのが面白い。
けれども、それはハルにとっては若干納得の行かないもののようなのですが・・・。

永野芽郁さん演じるハルは、若干調子のいい言動が見えたりもして、
どこか朝ドラの鈴愛ちゃんに通じるところがあって、面白かった。
そして、若き日の佐和子を演じている方を、最近どこかで見たなあ・・・と思いながら見ていたのですが、
エンドロールのキャスティングを見て、気が付きました。
石橋静河さん。
律くんの奥さんじゃありませんか!!
もしかすると本作、公開時に見るよりも、今見たのが正解かもしれません。
そんな、どうでもいいところに興味を惹かれてしまった次第ではありますが、
まあ見て損はない、良作。

PARKS パークス [DVD]
瀬田なつき,瀬田なつき,トクマルシューゴ
ポニーキャニオン



<WOWOW視聴にて>
「PARKS パークス」
2016年/日本/118分
監督・脚本:瀬田なつき
出演:橋本愛、永野芽郁、染谷将太、石橋静河、森岡龍
緑のみずみずしさ★★★★☆
ノスタルジック度★★★★☆
満足度★★★.5


ミッション:インポッシブル フォールアウト

2018年08月12日 | 映画(ま行)

スーパーマンでなく、人間が頑張っている感、ハンパない。

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ミッション・インポッシブルのシリーズ第6作。



盗まれたプルトニウムを回収するミッションに挑んだイーサン(トム・クルーズ)でしたが、
失敗し、テロ組織“アポストルに”奪われてしまいます。
イーサンに不審を抱くCIAは、監視役として敏腕エージェント、ウォーカー(ヘンリー・カビル)を送り込みます。
そんな中でも、核によるテロ活動を阻止すべく動き出すイーサン。
起死回生なるか・・・?!

イーサンの悪夢から始まる本作、
これまでの作品とは少しイメージが異なるような気がしました。
まずイーサンは、チームの仲間を救おうとしてミッションに失敗。
そんな優しさを彼自身自らの弱点と思っているようなのですが、
実はそれこそが彼の強みで、
そんな彼だからこそ、同じチームで働きたいと思う仲間がいるわけなのですよね。



トイレでの格闘シーンなども、
トイレブースはめちゃくちゃになるわ、仕切りの壁はぶち抜くは・・・、
なんとも派手なのですが、肝心のイーサンのアクションにはやや精彩を欠くのです。
どちらかというと殴るより殴られる方が多いような・・・。
そんな中で、さすが若手のウォーカーが心強く、
監視役とはいえ、この二人は友情を結んでいくようにも思えるのですが・・・。



そんなこんなで、イーサンもいよいよ老化には逆らえず、
体力は下降気味なのか、と思ってしまうわけなのです。
そしてそれはもちろん、トム・クルーズ自身のことでもあります。
彼も御年56歳。
若い頃と同じに動けたら化物だ・・・。
・・・と、沈んだトーンで始まる前半。

が、しかし!! 
終盤でものすごいことになるのですよ。
例の、骨折をしたというビルの間を飛び越えるシーンもすごいですが、
ヘリの追撃シーンがまたすごい。
決してスタイリッシュというのではないのです。
でも、まさに命がけ、ど根性、最後の最後まで諦めずやり遂げようとする強い意志に
とにかく圧倒されてしまうのです。
前半のやや衰えを見せるシーンの数々はフェイクなのか、それとも計算づくか。
まあ、それもどうでも良くなってしまうくらいに、
ただただ彼の無事を祈ってしまうような、のめり込み方をさせてくれる作品なのでした。



この味、若いときには出せなかったと思うのです。
トム・クルース、今だからこそです。
CGなし、スタントマンなし、本人が見せるアクションならでは。
まさに生身の人間が、必死で頑張っている感がハンパない。
また、ラスト、チームの仲間それぞれが同時進行で死力を尽くしていくところもしびれますよね。
いかにもわざとらしいカウントダウンだって、許せてしまう。




クールでスタイリッシュなイーサン・ハントが、やや老いて人間味を覗かせる、
私は本作がシリーズの中で一番好きかもしれません。


<シネマフロンティアにて>
「ミッション:インポッシブル フォールアウト」
2018年/アメリカ/147分
監督:クリストファー・マッカリー
出演:トム・クルーズ、ヘンリー・カビル、ビング・レイムス、サイモン・ペッグ、レベッカ・ファーガソン、ミシェル・モナハン

ドキドキハラハラ度★★★★★
満足度★★★★★


「涙香迷宮」竹本健治 

2018年08月11日 | 本(ミステリ)

黒岩涙香の薀蓄と、いろは歌

涙香迷宮 (講談社文庫)
竹本健治
講談社

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囲碁界では有名な老舗旅館で発生した怪死事件。
IQ208の天才囲碁棋士・牧場智久は謎を追いかけるうちに
明治の傑物・黒岩涙香が愛し、朽ち果て廃墟になった茨城県の山荘に辿りつく。
そこに残された最高難度の暗号=日本語の技巧と遊戯性をとことん極めた「いろは歌」48首は
天才から天才への挑戦状だった。
『このミステリーがすごい!2017年版』(宝島社刊)国内編第1位!!
第17回「本格ミステリ大賞」小説部門受賞!
第40回「週刊文春ミステリーベスト10」国内部門第3位。

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「このミス」一位作品ということで興味があったので、文庫化を機に手にとってみました。
竹本健治さんは、私にははじめての作家さん・・・。

本作は、ミステリというよりも黒岩涙香のウンチク本と言ってもいいかもしれません。
そもそも黒岩涙香なる人物を私は全く存じてなかったのですが・・・。
1862年生まれ。
明治~大正の半ばほどまでを生きた方。
「萬朝報」という新聞を創刊し、多くの翻訳小説を発表。
五目並べの発展形である「連珠」という競技を発案、
競技かるたのルールの統一に尽力した、
等々、多芸多才の持ち主だったようです。
趣味を始めたら際限なく突き詰めてしまう、という感じでしょうか。
もし今生きていたらどんなことに挑戦したのかな?などと想像すると楽しい、ユニークな人物。


で、本作のストーリーはこの黒岩涙香マニアが集まって、
涙香の残した「いろは歌」を読み説いていく・・・、
そんな中で起こる殺人事件。
でも殺人事件はあくまでも付け足しで、いろは歌のほうがメインのようです。


いろは歌というのは、「いろはにほへと・・・」でお馴染みですが
いろは48文字を意味の通るように並べて歌を作る、もちろん各文字は一度しか使わない、
というものですが、この本にはなんとそれとは別の48種プラスαの歌が作られているのです!! 
いやあ・・・驚き、桃の木・・・。


しかし正直のところこれが、あまり面白いものではない。
それぞれきちんと読みこなすほどの興味も気力もなく、
ザザザっと、読み流してしまったというのが正直なところ。
このような作品が「このミス」1位というのが怖いところです。
「このミス」はかなりマニアックですよね・・・。
私のようなミーハーなミステリファンにはとっつきにくいことが多いので要注意です。
ただ本作を書き上げた著者の努力と根性には頭が下がる。
それは確か。


「涙香迷宮」竹本健治 講談社文庫
満足度★★.5


去年の冬、きみと別れ

2018年08月10日 | 映画(か行)

くるくると現れる真相

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本作は題名からするとラブストーリーかと思うのですが、
そうではなく、サスペンス。
あの「教団X」の中村文則さん原作ですので、一筋縄で行くはずがない。


婚約者と結婚を間近にした新鋭ルポライター、耶雲恭介(岩田剛典)。
天才写真家・木原坂雄大(斎藤工)が関わる盲目の女性焼死事件について調べ始めます。

ストーリーが進むごとに現れる新たな局面。
そしてそれぞれの登場人物が持つ心の闇。

例えばーーー
耶雲はただ意欲に燃えるルポライターなのではなく、はじめからある目的を抱いている。
彼の婚約者・百合子(山本美月)は、単なる心変わりで木原坂になびいたわけではなく・・・。
編集者・小林が耶雲の調査に乗り気でなかったわけは・・・



はじめに提示された構図がガラガラと崩れ去って、再構築されたときに現れる真相。
なかなか興味深いものでした。
結局、黒幕的存在だったのは・・・?



炎の中でもがき苦しむ女性の姿を、
救いだそうともせず、食い入るように見つめ、写し取ろうとする芸術家・・・
というのは、地獄変をもとにしていると思うのですが、
残念ながらそこのところのテーマにはさほど深入りはしていません。
ここをもっと掘り下げれば、作品にも重みはましたかも・・・とは思います。

それにしても斎藤工さんのこういう役、なんともピッタリで、いいですよねえ。
写真家も映画監督も似たような感じだし・・・。
でもそれを言ったら、耶雲の役は窪田正孝さんにしてほしかった。
悪いけれど、岩田剛典さんよりもドンピシャに思えるのですが・・・。

 

去年の冬、きみと別れ (初回仕様) [DVD]
岩田剛典,山本美月,北村一輝,斎藤工,浅見れいな
ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント

<J-COMオンデマンドにて>
「去年の冬、きみと別れ」
2018年/日本/118分
監督:瀧本智行
原作:中村文則
出演:岩田剛典、山本美月、斎藤工、浅見れいな、北村一輝、土村芳
ミステリ度★★★★☆
満足度★★★☆☆


ディストラクション・ベイビーズ

2018年08月09日 | 映画(た行)

屈折した孤独感

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豪華キャストにつられてみてみましたが、
青春モノでも普通の感動作とは程遠い、まさに“破壊”的作品でした・・・。



愛媛県の小さな港町。
いつもケンカばかりしている泰良(柳楽優弥)は、ある日突然町から姿を消し、
松山の中心街で強そうな相手を見つけてはケンカを売るようになります。
そんな泰良を見かけた高校生・裕也(菅田将暉)は、泰良とともに行動するようになり、
通行人に無差別に暴行を加えるなど、次第に暴力性をエスカレートさせていきます。
そしてついには車を強奪し、その車に乗り合わせていた少女・那奈(小松菜奈)をも巻き込んでいく・・・。

ここで泰良は非常に無口で、ついに彼が暴力を繰り返す理由を語らないし、
作中で明かされることもありません。
ただひたすらに戦うことのみを楽しむ“モンスター”のようでもある。
なんだか私には彼が、殴ることよりも殴られることを楽しんでいるようにも思われるのです。
なにも持たない自分を人は振り返ることすらしないけれど、
こちらが殴りかかれば相手も殴り返してくる。
こんなふうな相当に屈折したコミュニケーションを求めるという「孤独」を
彼は抱えているのかもしれない。
泰良が相手にするのは大抵が街のチンピラ風情で、
別にお金目当てでも何でもないので女子供は相手にしません。
ところが、彼に心酔する裕也は実際クズなやつで、
もともと自分の体力には自信がないので、自分より弱いものを相手に選びます。
つまり殆どが女性。
そして相手のお金を奪ってしまう。
菅田将暉さんはこんなふうな威勢ばっかりよくて狡くてダメなやつの役が
よく似合っちゃうのですよねえ・・・。
しかし泰良はそんな裕也を見てもなにも言いません。
そもそもそんなことには興味がないのでしょう。
日常性とか、安直な平和とかを望む気持ちはサラサラない、
ある意味純粋なモンスター。



奈那の破壊力もすごかったですね。
彼女を相手にするには、裕也は小モノ過ぎたのかもしれません。



さて一方、泰良の故郷ではただ一人の肉親・弟の将太(村上虹郎)が、兄のことを案じています。
街に出て兄の行方を探したりもする将太は、まあ普通の感覚をもった高校生。
本作の中では一番マトモな人物。
この人物の配置はなにを意味するのだろうかと逆に考えてしまいました。
もしかすると、これは少し前の泰良なのかもしれない。
こうした普通の少年が、虚無を抱え暴力性に生きがいを感じるようになるまでに一体何が彼に起こったのか。
そこが知りたくなりました。

ディストラクション・ベイビーズ 特別版(2枚組)[DVD]
柳楽優弥,菅田将暉,小松菜奈,村上虹郎,池松壮亮
松竹



<WOWOW視聴にて>
「ディストラクション・ベイビーズ」
2016年/日本/108分
監督:真利子哲也
出演:柳楽優弥、菅田将暉、小松菜奈、村上虹郎、池松壮亮
破壊力★★★★☆
満足度★★★.5


「西郷の首」伊東潤

2018年08月07日 | 本(その他)

武士の世の終焉

西郷の首
伊東 潤
KADOKAWA

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その首が、日本を変えた。ひたすらに熱く切ない本格歴史長篇!
ひとりは軍人に。ひとりは利通暗殺へ。
西郷の首を発見した男と、大久保利通を暗殺した男。
2人の加賀藩士は、親友同士だった――。
「維新」とは何だったのか?
武士の世の終焉を活写した、ひたすらに熱く切ない本格歴史長篇!

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伊東潤さんは、私にははじめての作家さんなのですが、
皆様のご推察の通り、NHK大河ドラマ「西郷どん」に関連して、
興味を持って読みました。
と言っても本作の主役は、幕末、加賀藩の二人の足軽、島田一郎と千田文次郎です。
二人は親友同士。
実在の人物で、事実をもとにしたストーリーです。


幕末といいえば脚光を浴びるのは長州藩、薩摩藩・・・。
薩長土肥などともいいますね。
会津藩などは逆の立場でスポットが当てられる。
そんな中で、加賀藩はあまり注目されないのですが、
その注目のされなさこそが、本巻のテーマと言ってもいいかもしれません。


尊皇攘夷思想に揺れる日本。
幕府側につくか、長州側につくか、各藩にとっては生き残りをかけた大きな決断。
加賀藩も内部でいろいろな論議があったのですが、
大藩故に保守的陣営が強かったという事情もあるのでしょうか・・・
どうにも優柔不断で、行動に踏み切るにも煮え切らない。
尊王を主張する有能な者たちを処刑してしまったりもしています。
最終的には長州藩につくことになりますが、それはもう、見え透いていたわけで・・・。
だから明治の世になっても、加賀藩からは一人も中央政府の要職につくことはなかった。
しかも新政府によって「士族」の生きるすべがどんどん失われていく。
そんなわけで各地で士族の反乱が起き、最後には西郷隆盛による西南の役があって、
いよいよ武士が武士として生きる道は絶たれてしまいます。

加賀藩の一郎と文次郎は親友同士ではありますが、
考え方の相違で進む道を違えていきます。
一郎はあくまでも反政府活動へ。
文次郎は時代の流れには逆らわず、それでも武士の魂をいだきつつ陸軍軍人に・・・。

二人がそれぞれに西郷隆盛と大久保利通の死に関わりを持つようになるというのも劇的。
思えば西郷と大久保こそも同郷の友人同士が道を違えてしまった、というのも運命的ではあります。
激動の時代、多くの人が生き方を変えなければならなかった。
あるものはその道半ばで命を落とすことになり・・・。
だからこそ、語り継がれる物語には力がありますねえ・・・。

作中、水戸藩天狗党の悲劇についても触れられていたのを嬉しく思いました。
私は朝井まかてさん「恋歌」でそのことを知ったのですが、
いろいろな歴史小説を読んでいくとまた、色々なつながりも見えてきて、面白いものです。

図書館蔵書にて
「西郷の首」伊東潤 角川書店
満足度★★★★★


奥田民生になりたいボーイと出会う男すべてを狂わせるガール

2018年08月06日 | 映画(あ行)

可愛ければ許される?

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雑誌編集者のコーロキ(妻夫木聡)は、奥田民生を崇拝しています。
自然体で決して飾ろうとせず、その自分流がなんともカッコイイ。
そんなコーロキが、ライフスタイル雑誌の編集部へ異動になり、
仕事で出会ったファッションプレスの美女・天海あかり(水原希子)に一目惚れ。
念願かなって二人は付き合うようになるのですが、
あかりの自由すぎる言動にコーロキは振り回されてボロボロに・・・

なんというか、女性の目線で見てもあかりは相当自己チューなんですが、
男性はそのわがままぶりも容認。
それこそが彼女の魅力、などと思ってしまうようなのですね。
可愛い子ってホントにズルい・・・とただただ呆れてみておりました。



あかりは特別に男性に好かれようと演技しているわけではなくて、
天性として、相手の男性にとって「好ましい」態度をとってしまうようなのです。
まさに「出会う男をすべて狂わせる」。
しかも来るもの拒まずだから、何人もの男と付き合うことになってしまう。
しまいに哀れささえ覚えるようになってくるわけですが・・・

どうにもこうにも、こんなストーリー自体がやっぱり男性によるものだなあ、と思います。
確かに、出会う男すべてを狂わせる女はいるかも知れないけれど、
それはもっとしたたかに計算高く「演じる」結果であるとしたほうが、私的には気持ちが収まる。
まあとにかく、あかりは「奥田民生になりたいボーイ」には不向き。
それだけは確かだ。
ちょい役のように見えた作家(安藤サクラ)が
意外と重要人物だったりしたのはナイスでした。



奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール DVD 通常版
妻夫木聡,水原希子
東宝



<WOWOW視聴にて>
「奥田民生になりたいボーイと出会う男すべてを狂わせるガール」
2017年/日本/100分
監督・脚本:大根仁
原作:渋谷直角
出演:妻夫木聡、水原希子、新井浩文、安藤サクラ、江口のりこ、松尾スズキ

女のわがまま度★★★★★
満足度★★.5


トリガール!

2018年08月05日 | 映画(た行)

琵琶湖のてっぺんをめざして

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大学へ入学したゆきな(土屋太鳳)は、
一目惚れした先輩・高橋圭(高杉真宙)にさそわれて人力飛行サークルに入部します。
ところが、先輩との幸せなキャンパスライフを夢見たゆきなの前に現れた、
サークル史上最高のパワーをもつ坂場(間宮祥太朗)。
ゆきなは坂場とは相性サイアクと思えたのですが、
彼とペアを組んで飛行することになってしまいます。
そしていよいよ琵琶湖の鳥人間コンテストへ・・・

題材は良いと思うのですよ・・・。
でも、毒舌ツッコミ女のゆきなの、その絶叫調の喋り方がなんとも聞き苦しくて、
あまり魅力を感じられません。
もう少しなんとかならなかったのかなあ・・・。
空を飛ぶことを夢見る多くの人たち。
そんな崇高な思いを表現すれば、もっと感動を呼ぶものができるはず。
本作はコメディー味に力を入れすぎるあまりに、感動のポイントがボケてしまったように思います。



この人力飛行機を飛ばすためには、もちろんその飛行機の設計と制作、
そしてそれを乗りこなす技術と体力、実に各種様々な人の力が必要だということがわかりますね。
そんなところが表現されていたのはステキでした。



最近間宮祥太朗さんはNHKの朝ドラで顔なじみになりましたが、
本作の坂場役は「リョウちゃん」とはぜんぜんイメージが違います。
さすが役者ですなあ・・・。
感心してしまいました。
・・・というよりも、朝ドラの「りょうちゃん」のほうが、
間宮祥太朗さんにとてっては異色の役柄というべきなのかもしれません。
あ、ぜんぜんイメージが違うといえば、「ブッチャー」の矢本悠馬さんも。
でも矢本悠馬さんの三枚目ぶり、好きだわ~。



それから、鳥人間コンテストの実況アナウンサーが羽鳥アナなのですが、
実況中に感動して涙を流すシーンが。
そこまでやるか、やりすぎだろ、と突っ込みたくなりました。

所々でイマイチ感の漂う作品・・・

トリガール! 通常版 [DVD]
土屋太鳳,間宮祥太朗,高杉真宙,池田エライザ,矢本悠馬
KADOKAWA / 角川書店

<WOWOW視聴にて>
「トリガール!」
2017年/日本/98分
監督:英勉
原作:中村航
出演:土屋太鳳、間宮祥太朗、高杉真宙、池田イライザ、矢本悠馬
飛ぶことの魅力度★★★★☆
満足度★★.5


「最悪の将軍」朝井まかて

2018年08月04日 | 本(その他)

徳川綱吉の本当の功績

最悪の将軍
朝井 まかて
集英社

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生類憐れみの令で知られる江戸幕府の五代将軍・徳川綱吉は、
旧来の慣習を改め、文治政治を強力に推し進めて日本の礎を築いた。
だが、その評価は大きく分かれている。
加えてその治世には、赤穂浪士討ち入りや富士山噴火など、数々の難事が生じた。
綱吉は暗君か、それとも名君だったのか。
今も世間に誤解される将軍の、孤高かつ劇的な生涯を、
綱吉とその妻・信子の視点で直木賞作家が描ききった傑作歴史長編。

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五代将軍・徳川綱吉といえば思い浮かぶのは「生類憐れみの令」。
犬公方と呼ばれ、ダメな将軍のイメージが強いのですが・・・。
朝井まかてさんがその実像に迫ります。

綱吉が将軍として在位したのは1680年から1709年の29年間。
それまではあくまでも「武力」によって国を治めていたわけですが、
江戸幕府の統治も落ち着き、戦乱の世も遠くなってきた。
そこで綱吉は、武力には寄らず、儒学を基とし、徳を重んずる「文治政治」を推し進めたわけです。
「生類憐れみの令」というのも、人も動物も命は等しく大切である・・・と
綱吉は言いたかったのだけれど、
お触れになるとその文言ばかりが一人歩きをして、
人間より動物のほうが大事というイメージが独り歩きしてしまった・・・ということのようです。
下の方のお役人が忖度しまくった・・・。
まあ、それはともかく、本当は「文治政治」に踏み切ったことこそが、綱吉の最大の功績
ということでもう少し評価されていいのかもしれませんね。


本作は綱吉本人とその妻・信子の視点で書かれていますが、
いまいち感情移入しにくい気がします。
もっと生き生きとした生身の人間を感じるシーンがあればよかったのでは、と。
いずれにしてもご立派な雲の上の人のように感じてしまう。
しかし中で、初めて異人と面会するシーンがあったのですが、そこはとても良かった。
驚きやら好奇心やら、生の人間味が感じられるところです。
まあ、実のところ将軍とその妻と言っても、会うためにはいろいろな手順が必要で、
そう簡単に心をかよわせられないと、そんな事情もありそうですけれど。

ところで、この綱吉将軍の期間に、赤穂浪士の討ち入り事件があったり、
富士山の噴火があったりしたのですね。
綱吉が「文治政治」を推し進めているところで、城内での刃傷沙汰ということで、
この出来事が相当綱吉の逆鱗に触れたという事情がよくわかります。
富士山の噴火というのも、あまりリアルに書かれたのものをこれまで読んだことがなく、
今で言う激甚災害だったことがわかります。
さすが富士山の噴火。そのスケールも大きい。
まだまだ知らない「歴史」があるものですね!

図書館蔵書にて
「最悪の将軍」朝井まかて 集英社
満足度★★★☆☆


ウインド・リバー

2018年08月03日 | 映画(あ行)

本作に圧倒される、一つの事情

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ネイティブアメリカンが追いやられたワイオミング州の雪深い土地、ウインド・リバー。
雪原で先住民の血を引く若い女性の遺体が発見されます。
新米FBI捜査官ジェーン・バナー(エリザベス・オルセン)が派遣され、
遺体の第一発見者であり、地元のベテランハンター、コリー・ランバート(ジェレミー・レナー)の協力を得て、
事件の真相を追います。



ランバート自身以前に娘を亡くしており、それゆえに捜査に協力する気になったのです。
つまりは、犯人を追い詰めるハンター。
まあ、若い女性が暴行を受けた挙げ句殺害され、その犯人を突き止めるという話ならこれまでにいくつもありました。
けれど本作はもっと重い現実を私達に突きつけます。
この被害者は執拗に暴行を受け、そこから逃げ出したようなのです。
ところが外気はマイナス30度。
そこを走ると、その冷気で肺の血液が凍り、肺が破裂して死んでしまうのだといいます。
しかも裸足。
彼女が逃げ出した場所から、遺体が発見された場所までは数キロ。
そこを手足が凍傷となりついには肺が破裂するまで走り続けた、
その生きようとする圧倒的な「強い意志」に驚かされるのです。
先住民の誇り高い「生」の声が聞こえるようです。



がしかし、実際はろくな産業もなく寂れ果てたこの土地にやってくるのは、
荒くれた半端者ばかり。
映画の最後に明かされるのですが、この地で失踪した先住民の女性が異常に多数であると・・・。
こんな、吹き溜まりのようになってしまった土地で生きていく他ない先住民たち。
一体誰がこんなふうにしたのか。
静かな怒りがこめられているような、大変力のある作品だと思いました。



終盤突然始まる銃撃シーンにも驚かされます。
日常の中に、こんなふうに当たり前に「銃」がある社会。
それもまた救いようのない現実なんですね・・・。
銃規制は、しようと思えばできないことではないのに・・・。



<ディノスシネマズにて>
「ウインド・リバー」
2017年/アメリカ/107分
監督:テイラー・シェリダン
出演:ジェレミー・レナー、エリザベス・オルセン、ジョン・バーニサル、ジル・バーミンガム、ケルシー・アスビル

生きる意志度★★★★★
社会問題度★★★★☆
満足度★★★★☆


ウェディング・テーブル

2018年08月01日 | 映画(あ行)

無難に面白いけど・・・

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親友からの結婚式の招待状を受けて、出席を迷ってしまうエロイーズ(アナ・ケンドリック)。
というのも、その花嫁の兄・テディと恋人同士だったものの、少し前に別れてしまったのです。
そのため、顔を合わせるのが気まずくもあり、けれどもう一度会いたくもあり・・・。
しかし、意を決して出席。
そのパーティで、彼女の席は19番テーブル。
そこは新郎新婦からは最も遠い最末席。
同席の人々は、新婦の子供の時のナニー、親との同業者、
親の友人の息子である高校生、服役中の男・・・
どうやら、欠席を期待されていた人々の寄せ集め。
しかし、互いに残念感をにじませながらも、共感を抱くようになっていきます・・・。

全てはその結婚パーティ会場の出来事。
落ちこぼれ感漂うそのテーブルの人々がなんともおかしい。
そんな中で、エロイーズがテディと別れた理由が明かされていくのですが・・・。
おやおや、これは簡単に別れてしまってはいけないというパターンなのでした。
悲喜こもごものドラマ、軽く楽しめました。
・・・というくらいで、あまり語るべきことはないか・・・。
あの高校生、いくら経験がないとはいえ、あまりにもひどいとは思う・・・。


<WOWOW視聴にて>
ウェディング・テーブル
2017年/アメリカ/87分
監督:ジェフリー・ブリッツ
出演:アナ・ケンドリック、クレイグ・ロビンソン、ジューン・スキップ、リサ・クドロー、スティーブン・マーチャント

結婚式あるある度★★★★☆
満足度★★.5