薔薇密室殺人事件
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ジェリーフィッシュ事件後、閑職に回されたフラッグスタッフ署の刑事・マリアと漣。
ふたりは不可能と言われた青いバラを同時期に作出したという、
テニエル博士とクリーヴランド牧師を捜査することに。
ところが両者と面談したのち、施錠されバラの蔓が壁と窓を覆った密室状態の温室の中で、
切断された首が見つかり…。
『ジェリーフィッシュは凍らない』に続くシリーズ第二弾!
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『ジェリーフィッシュは凍らない』に続くマリアと漣のコンビシリーズ第二弾!
本作は1980年代を舞台としていまして、
前作においてはコンピューターがようやく導入され始めた頃、
というところに意義がありましたが、
本作においては遺伝子組み換え技術。
青いバラです。
長く実現不可能と言われていた「青いバラ」を作出したという人物が、
ほとんど同時に2人名乗りを上げる。
ところがその二人がまもなく殺人事件に遭遇。
此度の近辺の人物たちと深く関係があると思われる「日記」も発見されるが・・・。
前作同様、青いバラを作り上げるための遺伝子組み換えの科学的記述が
なかなか詳しく語られています。
これは私にはすんなり納得できるような物ではなかったのですが、
基本的にはここは読み飛ばしても、ミステリとしての骨格に影響はないので、大丈夫。
実際には、青いバラは遺伝子組み換えにより2004年に
「アプローズ」という品種名で、発表されています。
でもこれ、青というよりは薄い紫、という感じ。
店頭で売られていたりする青いバラは、染料で染め上げたものだそうです・・・。
ともあれ、それに先駆けて各所で青いバラを造ることに
血眼になっていた人々がいたのは確かですね。
作中にも遺伝子的要素からなる「アルビノ」や病のこと、
そしてまた一歩進んで遺伝子組み換えで動物は創造できるのか・・・?
という話題にも広がっていて、興味深い一作でした。
薔薇密室やアリバイの謎は、いかにも本格ミステリふう、謎のための謎。
込み入りすぎると、どうでもよくなって思考停止してしまうという私にとっては、
ギリギリくらいのラインでしたが、登場人物の魅力が救いです。
<図書館蔵書にて>(単行本)
「ブルーローズは眠らない」市川憂人 東京創元社
満足度★★★.5