こういう時だからさ、ちっとはまとまった本読もうと思ってね。ユヴァル・ノア・ハラリの『サピエンス全史』。
すっごい本だぜ!!!!
地球上の物質の誕生から始まって、弱っちい哺乳類の一種、俺たちのご先祖、ホモ・サピエンス一派が、賢しく頭働かせて、勝者?に成り上がり、農業革命、科学革命、産業革命と偶然を巧みに引き寄せて動物を支配し、地上を席巻し、己の首を絞めつつある今、さらには、新しい技術の先に、全能の神にたどり着かんとしている、ってこの壮大さ!
って、書いても、この程度の構成や俯瞰、いくらだってあったさ、ってそっぽ向かれそうだが、その画期となる時代や出来事を捌いていくメスの鋭利さ、意外性が、ええーっ!そう来るの!の面白さなのだ。すでに知れ渡ってる事実もあれば、お初!って知識も盛りだくさんに提供してくれる。
上下全2冊だし、どのページ開いても無駄や寄り道なんてまったくなしの密度の濃さだ。とてもじゃないが、全体を概観するとか、個々の時代を論評する、なんてとてもとても!無知で老化進行中の半呆けジジイのなすべき業じゃない。人間ってやつと、その歴史と、その未来について考えてみたいって人にお薦めするだけだ。ともかく、面白いから。
凄い!面白い!ばっかり言ってると、読書苦手の小学生の読書感想文だから、ちっとは気の利いたこと言おう。
突如、将棋の藤井君ね、彼の頭の中にはこれまでの棋譜が何万手も詰まってるって話しだ。どんな頭の構造になってるのかしらないが、積年の名勝負の数々がすべてファイルされてるのかな。だから、いろんな局面にあってもぴたりとはまる決めの一手が差せるってことなんだろう。で、ハリルさんだ。この人の学識と記憶は途方もない。藤井君並みの、碁の異才、チェスの名人、マージャンの達人、ポーカーの天才、パチンコの釘読み大家、丁半の手利き、そういった多種多様な知識と奥義を十把一絡げに精通してる人だってことだ。だから、面白い!おっと、また言っちまった。
奴隷売買を信用の面から突き詰めるとか、ローマの帝国支配とコンキスタドールの中南米支配の違いとか、分野もあっち飛び、こっち戻りの博識さと意外性と説得力!ただ、ただ、唸る!
も一つ、この本の魅力。比喩が素晴らしい!下手な小説家よりよっぽど気の利いた譬えを連発している。それもさりげなく。
「肥満は消費主義にとってい二重の勝利だ。食べる量を減らせば経済は縮小するが、人々はそうする代わりに食べ過ぎ、その挙句、減量用の製品を買い、経済成長に二重に貢献しているからだ。」
「産業革命によって、時間表と製造ラインは、人間のほぼあらゆる活動のテンプレートになった。・・・時間表がすべてを支配するようになった。工場の勤務が夕方5時に終わるのであれば、近隣の酒場は5時2分には店を開いておいたほうがいいからだ。」
こんな気の利いた表現が溢れている。全世界1200万部!って帯の惹句は伊達じゃない。
コロナなんてとてつもないもんに襲われて手も足も出ない今だからこそ、たかだか生物の一種、されどサピエンス、考えてみるいい機会だと思うぜ。大きなお世話か。