ステージおきたま

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コントとランとご飯パンにうつつを抜かす老いの輝き

本の学び、映画でさらに!

2021-06-27 16:26:46 | 映画

 Netflixとかアマゾンプライムビデオって映像の図書館だって思わないか?

 気晴らしや時間つぶしにも好適だけど、勉強に利用するってのもありだって判った。

 先日、たまたま見つけた『サラエボ』って作品、第1次大戦のきっかけになったオーストリア皇太子の暗殺事件を扱ったものだった。暗殺者たちを陰で操っていたのは、セルビア当局じゃなく、実は戦争勃発で一儲けを企む政府高官たちだった、ってストーリー。もちろん、フィクションだから、その推察をそのまま信じるわけにはいかない。が、実行犯たち全員がセルビアの背後関係を否認していたってのは事実らしく、そこから推理を押し広げて、影の存在を描き出している。

 その当否は別として、当時、1914年頃の東欧の政治状況は理解できる。ハンガリー・オーストリア帝国がボスニアヘルツェゴビナを圧迫し、それに民族主義者たちが反発を強めていた、という歴史的背景を知ることができた。当時のオーストリア人にユダヤ人への激しい差別意識があったらしいってことなんかも。町の様子とか当時の服装なんかも参考になる。

 そんな映画に目が留まったのも、今、『ナチスの戦争』リチャード・ベッセル著、って本を読んでいたからなんだ。

 ナチスがあのような悪魔的集団ヒステリーを巻き起こせたのは何故なのか?それを知るには第1次世界大戦やその敗戦処理がドイツ民衆に与えた失望や憤激が大きいらしい。その辺はすでに知識を持っていたが、さらに、深く理解してみたいと思ってね。

 まだ、読書は途中、これからいよいよ世界相手のやけっぱち戦争に突入するところなんだが、そこまでで、学んだこと幾つか。

 一つは、ヒトラーの目的は血と大地、優秀なドイツ民族(血)がヨーロッパに広がり、農業国!(大地)として栄えることだった。それには領土奪取のための人種戦争しかない。まずは、チェコスロバキア、ポーランド、ここからユダヤ人やスラブ系の劣った住民を追放し、そこに東欧各地に散らばっていたドイツ人たちを入植させる。その追い出された人たちのやり場に困り、あの醜悪な大量虐殺に繋がって行った。ヒトラーには最初から戦争にしか目が行っておらず、すべては盲目的な戦争準備に費やされた。経済も市民生活もすべては犠牲にされ、ドイツ民族の優秀さとその団結を勝ち得ることが政治の目的であったこと、とか、第1次大戦後のドイツでは、右、左を問わず武装集団が力を競い合っていた、つまり暴力支配の素地が広がっていたこととか、ゲシュタポの組織はまだ不十分なもので、その取締力の不足分は民衆の積極的な密告で補われていたとか、人々は失業の減少に満足し差別や暴力支配には目をつぶっっていたこととか・・・

 なっ、きな臭い今時の世界にあって、反面教師にしなくちゃならないこと、たくさんあるだろ。

 この本は、とても明快で無駄な記述がなく、大切な指摘が次々と出てきてとても勉強になる。ヒトラー・ナチスがドイツを、世界を巻き込んで行った理由がよく理解できる。が、どうも、骨組みだけ、って味気なさは付きまとう。ナチスを支えたケーリングやヘスやヒムラーなんかが、既知の存在として現れては消えていく。ここがどうも、物足りない。

 ちょっと待ってくれ、その人ら名前しかよぉ知らんから!うーん、もっと別な学習機会も必要みたいだなぁ。

 と、思っていたら、Netflixに、『ヒトラーの共犯者たち』というドキュメンタリーがあった。

 これ、まさに、本で得られなかった細部がぎっしり詰まった内容だった。本ではほとんど触れられなかったドイツ労働者党のエッカートとヒトラーの子弟関係とか、ゲーリングやヘスやヒムラーの人となりなんかがとても詳しくたどられている。空中戦の英雄・ゲーリングが戦後辱められ、アクロバット飛行士として食いつないでいたなんてエピソードなど、へぇぇぇの秘話がぎっしりだ。レームの組織した突撃隊は、戦後列強から強いられた軍備縮小の抜け道として廃棄すべき武器を保管して出来上がったことなんか、なるほど、そういう経緯が私設軍隊に繋がったわけか、と大いに納得できた。

 中でもシーズン1の見ものは、ミュンヘン一揆の場面だ。歴史本では、あっけなく失敗した未熟な爆発のようにしか描かれていないが、実は権力奪取のけっこう際どいところまで行っていた様子が、再現映像でつぶさに見てとれる。

 これは良い映画に行き会った。

 本で本筋を理解しつつ、詳細は映画でたどる。しかも、様々な専門家が詳しく解説しているので、断片知識どころかより真相に迫ることができる。

 そうか、こういうNetflix映画の使い方もあったんだ。これまで人気ドラマにハマったり、世界各地の映画に興味惹かれたりして楽しんできたが、こうやって、意識的に学習の道具としての使うってのもありなんだ。

 これ、ある意味、映像の図書館って言ってもいいかもしれないな。途中、停止して考えたり、気になったところは何度でも繰り返し見られるってのも劇場映画とは違う用途だな。

 ヒトラーやナチスだけじゃなく、日本の近現代史、戦争史についても詳しいドキュメンタリー作って欲しいもんだぜ。あっ、もしかしてもう出来てたりするかも?

 

 

コメント
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