ステージおきたま

無農薬百姓33年
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コントとランとご飯パンにうつつを抜かす老いの輝き

もういいや!『愛の不時着』

2021-08-03 14:51:57 | 映画

 いやぁ、面白くってさぁ、毎晩1エピソードずつ楽しみに見て来たんだ。さすが、韓ドラ!行違う愛がなんとも切ない。韓国の女と北朝鮮の男、って、この設定はずばり、お見事!時代性を巧みに利用し尽くしたドラマだよ。

 同じ民族でありながら、国交もなく文化も異なってしまった二つの国の男女。しかも、何かと制約の大きい北を舞台にした物語の展開、どうしたって躊躇う恋にならざるえない。ずばり体当たりの性愛が当たり前のこっち側の住人にゃ、この秘めた恋、ひたむきな思い、無償の愛が、新鮮で刺激的だった。ジイサンだって、じれて、じれて涙にくれる、そんなシーンが手を変え品を返して準備されていた。いや、この辺の巧みさは、もはや、韓国ドラマのお手の物なんだろうな。

 年甲斐もなく?ずぶっとハマった『愛の不時着』なんだが、ユン・セリが南に戻るあたりに来て、待ち焦がれる気持ちが萎えて来た。

 だってなぁ。何かって言うと、リ・ジョンヒョクの親父だろ。政治局長ってお偉いさんの権威がすべて解決しちまう、ってねこれ水戸黄門の印籠さ。物語の初めのころは、リ・ジョンヒョクにも意地があって、極力自力で難局を乗り切ろうとしていて、その勇気と危うさを応援してたんだが、途中から大っぴらに父親の地位を利用するようになって、なんだかなぁ?その権威の前でへいこらひれ伏す庶民やエリートたち!無様過ぎるだろ。あまりに北の人たちをカリカチュアライズし過ぎで、笑えなくなっちまった。だって、これ、俺たち庶民の姿だぜ。

 ユン・セリは財閥の娘でかつやり手の経営者、対するは政権トップの息子で天才ピアニストの夢を諦めた将校、なんか、天は2物も3物も与える不公平さ。まっ、それは我慢しよう。でも、周囲の庶民があまりにみっともなさ過ぎじゃないか。村の女たちも、病院の医者たちも、リ・ジョンヒョクの配下の兵士たち、彼らはちょっとは日が当たってるが、どうも、在り来たりな描き方だなぁ。

 こうなると『ヴィンチェンツォ』思い出すんだぜ。あの立ち退きビル、クムガプラザの住人達のしたたかさと多彩なキャラクター描写。ヴィンチェンツォとホン・チャヨンの捨て身の活躍にほだされて変わって行く庶民たち。そして、ついには戦いの先頭に立つ恰好良さ!まっ、ご都合主義のいい加減さはかなりあるけどな。でも、一人一人に血が通った描き方になってた。

 『ヴィンチェンツォ』の方は、戦う相手は悪徳財閥で、二人の武器はマフィア仕込みの暴力と法知識だった。『愛の不時着』の方は、最大の武器は父親の地位!戦う相手もこの権力構造の中の悪徳将校、その点から見ても、前者の勝ち、だよな。

 北朝鮮という特殊な環境下でその国家的な締め付けに四苦八苦しているうちは、魅力的な物語だったが、その制御が緩んでくると、しだいに緊張感が失われて行く、ってことだ。エピソード10で南に舞台が移るが、もう、見たようなトレンディドラマの匂いふんぷんだぜ。作り手は達者だから、そこそこ魅せる展開が準備されてるんだろうが、もう、いいから、そんな引っ張らなくたって!って、ネトフリ映画の罠を感じさせるな。

 そう、38度線を一歩超えたところでの熱い抱擁シーンで終わりにすりゃよかったんだよ。どうして、こう、解決編に持ち込もうとするのかなぁ?世界は不可解、人生は中途半端、映画も未解決、あとは余韻で勝負、こういう潔さがネトフリ映画には欠けてるんだぜ。

コメント
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