ステージおきたま

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コントとランとご飯パンにうつつを抜かす老いの輝き

歴史に目を向けるドラマ

2021-10-03 11:18:04 | 映画

  誰だったか、批評家が言ってた、日本のドラマは歴史や社会に目を向けない、って指摘、ほんとその通りだと思う。日常のちょっとした出来事とか人間関係とか、うん、まあそれも大切にゃ違いないんだが、も少し広い視野で人間を見つめられないもんかねぇ。

 Netflixに惹かれる理由は、それ、大いにある。以下、軽く紹介するが、若干のネタバレあり、要注意だぜ。

 最近見たものだったら、スペイン映画『ジャガー』。

 時代は1960年代初頭、暗殺者あるいは私的制裁者たちの物語だ。1945年のナチスドイツ崩壊後、自殺したり捕まってニュルンベルク裁判を受けたりした者も少なくないが、多くのナチス幹部は海外に逃亡した。その逃亡先は主に中南米、秘密裡に手引きをしたのがバチカン!やソ連、アメリカ等の秘密警察的組織だった。その中継地となったのがスペインだった。なぁんてこと、知らなかったなぁ。当時のスペインはフランコの独裁政権下、ナチスの残党もかなり大っぴらに脱出作戦を展開してたようなのだ。

 その中心となる元ナチス将校と、ホロコーストで非道な人体実験を繰り返していた医者を追跡する収容所生き残りたちの物語なんだ。これは、意表を突くよなぁ。ナチスに好意的な当時のスペインだけに、追跡者たちの行動は過酷を極める。ナチス残党ばかりでなく、それに手を貸すスペイン官憲とのし烈な戦いがありきたりのサスペンス映画をはるかに超えた緊迫感で迫って来る。シーズン1が終わって、続きを早く見たいと急かせられる数少ない作品の一つだ。

 も一つあった。こっちはドイツの映画『THE DEFEATED 混沌のベルリン』だ。

 終戦直後のベルリンが舞台だ。アメリカ、ソ連、イギリス、フランスの四つの戦勝国に分割統治されてたベルリン、これも全然目が届いていなかった。凄いよな、一つの町が往来制限された四つの区域に分割されていたんだ。うん、知識としてはあった。でも、その現実、フィクションじゃあるが、の生々しさははるかに想像を超えてたな。アメリカ支配地区の警察、この女署長が主役なんだが、なんと、武器は警棒代わりの木椅子の足!もう、これ見せられただけで、当時のベルリンが置かれた状況の悲惨さがわかるってものだ。もちろん、廃墟のベルリンや日々必死て生き延びようとする人々の姿も。

 話は、この女性にアメリカから派遣された警察組織立て直しの刑事とその兄が絡む。この兄の行動が強烈なんだ。やや精神を病む人柄ながら、収容所の解放に立ち会った際に、その余りの非道さに心を狂わされ、収容所関係者の私的リンチに走る、って筋立てなのだ。兄の暴走を止めようと足掻く刑事、夫をソ連に人質に取られスパイ活動に引き込まれて行く女署長、ということで、目をそむけたくなる凄惨なサスペンスアクション映画となって進行する。

 どうだい、どっちも果敢に歴史に取っ組んでいるだろ。しかも、外観をなぞるんじゃなくて、微細な現実の再現にこだわっている。こういった映画を見ると、今の時代がどんな経過を経て成り立って来たのかってことも認識を新たにさせられる。エンターテインメントでありながら、十分に時代への批評性を持っている。ここらが日本のテレビドラマなんかと大違いなところだな。

 どうして日本だと歴史や社会と没交渉の作品になっちまうのか?それ、日本人の政治や歴史に対する無関心、あるいは忌避感情があるからだと思うんだ。時の政府の一存で、歴史的事実も軽く書き換えしてしまえるし、真実を追求しようとする学者たちを学術会議から追放しても異議申し立ての声は広まらない。この鈍感さ無関心さ、あるいは権力への迎合意識が作品で史実を追うことをためらわせているんだと思う。

 見る者が興味ないものを作るのはしんどい。いや、創る側にも感心はおろか、知識も乏しいのかもしれない。

 見つめるべき事実から目をそらし続けると、その先に待っているものは、痛いしっぺ返しのように思えるんだが。

コメント
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