菊の花って、食べる?
えっ?って驚くよな。どうやら、山形中心の食習慣らしいんだぜ。ここらじゃ、この季節、待ってました菊!なんて美味いんじゃ、こりゃもってのほかだ、って敬愛の情をこめて、この花を”もってのほか”とか”もって菊”なんて呼んでる。
食べ方、花びらをむしるだろ、それを酢をちょい入れた熱湯にさっとくぐらせる。酢が紫色を鮮やかに発色させる。あとは、酢の物、クルミ和え、サラダなど菜っ葉なんかと同じ扱いかな。あっ、煮物にゃ向かないけどね。
お味の方は、菊特有の香りと苦み、初めての人だと、一瞬引くかもな。なんだ!葬式の香り?
ここ山形じゃ、庭で菜園とか畑あり、って家なら、まず間違いなくその片隅に植えられている。ただ、毎年植え替えが必要なようで、ってつまり、そこは神さんの領分、植えっぱなしだと色も冴えなくなって来る、らしい。
秋の半ば、一斉に咲き誇り、霜が降れば茶色く変色してお終い、ずいぶんはかなく潔い畑の恵だ。せっかくこんなたくさん咲いたのにぃぃぃ、って勿体ないから、湯がいて小分けして冷凍保存する。
株分けしたり、芽を間引いたり、支柱を立てたりと大切に手を添えて来た神さんとしちゃ、せっかくの実り、一年通して楽しみたいって気持ちなんだろうが、季節の味覚は旬に食べるのが一番って思いの強いこっちとしては、冬や春に出されてもなぁ、と箸はすくみがちだ。
が、まぁ、秋の豊かさを思い起こすのも悪くはないんだけどな。
そうそう、ここらじゃあまり流行らないんだが、我が家じゃ黄色い菊も作ってる。
”阿房菊"って名前だ。こっちの方は、香りもくどくないので、全国版かもな。でも、その個性の頼りなさが山形人にゃ物足りないんだろう。
菊っていったらもって菊!せいぜい摘んで、知り合いとかにも送ろうか。