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「<戦争責任>とは何か」こりゃ重い本だぜ、新書だけど!

2021-10-14 14:03:33 | 本と雑誌

 「<戦争責任>とは何か」木佐芳男著・中公新書、たかだか?新書1冊、3週間もかかって読み通した。いえ、ご安心を。途中菜の花座の新作台本執筆で中断2週間もあったんでね。それでも、重い本だった。

 日本は戦争の加害者責任の意識が薄いから中国や韓国から責められる。その点、ドイツは国家としてしっかり反省してるから、被侵略国ともトラブルが起きない。これ、定説みたいになってる。でも、本当かい?んじゃドイツ人は第2次大戦についてどう感じ、どう責任を取ったのか?これがこの著作の内容だ。

 不思議に思ってたんだよ。独ソ戦の壮大かつ凄惨なあり様を、岩波新書の「独ソ戦」大木毅著やスヴェトラーナ・アレクシェービッチ著「戦争は女の顔をしていない」なんか読んで、目の当たりにしてたからね。国土が、つまり暮らしの場が戦場になるって、これほどの凄まじさだなんて、思い至らなかった。日本じゃ沖縄戦ぐらいしかないものな。それだって、東部戦線に比べれば短期間だし、ほぼ一方的だった。殺し、殺され、犯し犯される、住民も巻き込んだ肉弾戦なんて。もちろん、原爆や空襲被害が悲惨であるのは間違いないが、ちょっと性格が違う。ドイツに対して、侵略受けたポーランドとかチェコとかロシア、当時はソ連、その他多くの国々が責任追及しなかったのか?れっきとした侵略戦争じゃないか。

 結論は二つだ。ドイツは厳しく責任追及し、償いを行った。が、それはユダヤ人虐殺、ホロコーストについてのみだった、これが一つ。も一つはその歴史的未曾有の犯罪はナチスとそれを主導したヒトラーのせいだった、との認識とそれに基づく反省だったってことだ。

 すべてはヒトラーが悪い、ナチスが非道だった、フツウのドイツ人は引き回されただけだ、これがドイツ人の戦争の受け止め方だった。ドイツの厳しい戦後責任の追及とは、反ユダヤ主義=ナチズムの根絶に向けられただけだった。

 東欧、西部ソ連への侵略戦争はあくまで通常戦争であって、それはお互い様、平和を破壊した罪とか、戦地での非戦闘員への非道な行いなどはなかった。あったとしても、まっ、よくある話しさね、ってこと。あれが???

 戦闘を指揮したドイツ国防軍もその観点からほぼ無罪放免された。戦後すぐに冷戦構造がドイツを二分し、西側の一員として再武装を要請されたってことも大きかった。軍人や官僚は貴重だったんだ、再軍備と国の再建のために。日本も戦犯が呼び戻されたけど、それがドイツでは大規模かつ性急に行われたってこと。

 ホロコーストは恥ずべき歴史だ、それを行ったナチスは許せない。でも、その責任追及は、不徹底だった。なぜなら、戦時ヒトラーに喝采した人たちを洗い出せば、8割以上のドイツ国民が該当するからだ。これは辛い。ドイツの人々は、ナチスとヒトラーにすべての罪を擦り付けて、自身は罪から逃れた。人のせいにすれば、いくらだって厳しく追及できる。

 人間、生きて行く上で、意識的無意識的にウソで身を守る、って言ってはドイツ人にはむごいかもしれない。それだけ、ナチス、ホロコーストという行いが圧倒的な罪障としてのしかかったいたから、それを償うだけで精一杯だったと言うべきなんだろう。

 ドイツの敗北が明白になり、敗走に次ぐ背走を重ねドイツ全土が破壊され、男たちは殺され、女たちは凌辱された。この経験も、ドイツ人の被害者意識を支えているのだろう。俺たちだってやられたじゃねえか、おあいこだぜ、ってね。どっちが喧嘩しかけたか、なんてすっかり忘れて。

 戦争責任についてドイツを見習え!は意味をなさないってこと、教えてもらった。でもなぁ、ほれ見ろ、戦争なんてお互い様さ、なんて歴史修正主義者の言い分に軍配を上げるわけにゃいかないぜ。最近はめっきり分が悪くなってきているものの、日本の平和教育や歴史認識の方が、真っ当で誠実で次の時代を展望する内容を持っているってことだ。

 ドイツには平和資料館はない。その視点がない。犯された数多くの女たちへの償いなど問題にならない。あの戦いは、あくまで通常の、つまり歴史的に数ある戦いの一つに過ぎない。これが大方の認識のようだ。これは見習う対象ではないよなぁ。差別や偏見へのあくなき拒絶は別として。

 ドイツがアメリカの尻馬に乗って外国派兵する理由もわかるってもんだぜ、って言いたくなる。まっ、そんな単純な話しじゃないだろうけどな。  

 

 

 

コメント
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