ああ、ダメだ!完全に落ち込んだ!劇団プークの『うかうか三十、ちょろ四十』。
風車を象徴的に使った演出も巧みだった。舞台中央の満開の桜も照明に映えて見事だった。紗幕奥に風車と桜が浮かび上がるオープニングなどぞくぞくとした。演ずる役者たちの声も、声量、味わいともに一品だった。人形のとぼけた表情も作り込まれた衣装も、いつものこととは言え、見応えがあった。もちろん、マリオネット(ポルトガルギターとマンドリンのデュオ)の音楽もしっとりせつなく舞台を包んでいた。
そう、プロの劇団にいいもの見せられたからって、そりゃ、当たり前だろ?へこむ?って自意識過剰ってもんだ。いやいや、違うんだ。この脚本のことなんだ。そう、井上さんだ。井上さんの処女作だ。実は、この作品、今から10年ほど前に読んだことがあった。で、そのときの印象。なんか、つまらねえ本だ!って。これが賞もらえるってどういうこと?正直、そう思ったんだ。だから、今日も、あまり期待していなかった。
オープニングの美しさや人形の魅力はあったけど、前半は、ああ、やっぱりつまんねえや、って、まぶたが重くなる瞬間もあった。ところがだ。村の殿様が典医を連れて病気の村人を往診し、病気なんぞではない、元気そのものだ、と元気つけて帰った後、大喜びで浮かれる病人の前に家来がやってきて、殿様は狂っていると伝え詫びていくところから、一気に話しが反転した。ええーっ!こんな話しだったんか!?これはかんなし残酷な設定じゃないか。案の定、病人はどん底に突き落とされてやけを起こして死に、その女房も後を追う。どうする?この暗い結末。もう、目が離せなくなってしまった。
そして、エピローグ。それから十年後、正気に戻った殿様は、狂気の間に自分が犯した罪深い行いの一部始終を知ってしまう。これもまた、つらい!そして、最後の殿様のせりふ、「これからなんぼ苦しまなくちゃなんねえとしても、俺は正気でいたいよ」。二人の死を背負っていこうとする殿様の暗い覚悟に桜吹雪が降りかかる。さらに、殿様のお声掛かりにも些かもなびくことのない村娘親子。この設定には、井上さんのお上、何する者ぞ!の意気がくっきりと感じ取れるじゃないか。
こんな作品だったのか!こんなに奥深い脚本だったのか。ああ、僕はいったいどんな読み方をしたんだ!これほど見事な作品を読み取ることができなかったなんて。本当に情けない。だから、見終わった直後の一言は、情けねえよお前!
最近、映画では『おくり人』が絶対いい、賞を総なめするって予言して的中し、脚本では舞台は見られなかったが『焼き肉ドラゴン』が素晴らしいと触れ回って、これまた大きな賞を取りと、ちょっと僕自身、鑑賞眼に自惚れていたから。ああ、ダメだ!恥ずかしい!脚本書いてます、演劇やってます、なんて、もう、とっても言えない。
まずは、謙虚になろう。まずは、じっくり本を読もう。まずは、しっかり勉強しよう。結局今年の元旦の計に戻るってことだ。