堅振の秘跡についての説教
ドモルネ神父 2023年1月8日
はじめに
1月28日には、フェレー司教様が、大阪のチャペルで、また1月29日には東京で、堅振の秘跡を授けてくださる予定です。この儀式で堅振を受けることを、あるいは、この儀式に単に参列するだけであってもそれを実り豊かなものとするために、今日と今後2回の主日の説教は、堅振についてのものになります。今日は、堅振の秘跡全般についてお話しします。最初に、秘跡とは何かということを思い起し、次に、堅振の秘跡とは何か、そしてその効果は何か、ということについて、具体的に説明します。
秘跡全般について思い起こす
私たちの主イエズス・キリストは、私たちを天国へ、つまり、天主の永遠の命と完全な幸福にあずかるように、招いておられます。私たち自身には、天主の命にあずかる権利も力もありません。天主の命は、私たち人間の本性の力を完全に超えています。私たちの主イエズス・キリストが、そして主だけが、この命を私たちに与えることがおできになるのです。ですから、主は、そのために、七つの秘跡を制定されたのです。では、秘跡とは何かを思い出してみましょう。
まず第一に、秘跡とは、外的なしるしです。このことが意味するのは、秘跡とは、私たちが感覚で認識する身振りや言葉であって、目に見えない現実を表すものだということです。ですから、洗礼のとき、私たちは、人の額に水が流れるのを見て、「われ、父と子と聖霊との御名によりて、汝に洗礼を授ける」という言葉を聞きます。この流れる水と、この言葉は、私たちには見えないながらも、その人の霊魂の中で起こっていること、つまり、原罪からの清めを、外的に表しているのです。
次に、秘跡とは、恩寵を生み出すものです。第一に、秘跡は、天主の命にあずかることのできる成聖の恩寵を、私たちの霊魂の中に、生み出し、植え付けるのです。また、秘跡は、私たちが全生涯を通じて自分の義務を果たすために必要な、助力の恩寵を得る権利も与えてくれます。助力の恩寵とは、私たちが善い行いをすることができるように、天主から与えられる助けのことです。
では、堅振の秘跡について、もっと詳しくお話ししましょう。
堅振の秘跡
堅振の秘跡を授けるにあたって、司教は聖霊に祈り求めてから、堅振を受ける人の頭に手を置き、その人の額に聖香油を塗り、次の言葉を述べます。「われ、父と子と聖霊との御名によりて、汝に十字架のしるしをなし、たすかりの香油をもって汝を堅固にする」。聖香油とは、オリーブ油と香を混ぜたもので、聖木曜日に司教によって聖別されたものです。
私たちが見聞きするこの身振りと言葉は、堅振を受ける人の霊魂の中でそれと同時に起こっている、目に見えない現実を表しています。その現実とは、聖霊が霊魂に来臨し、霊的な成熟をもたらすことです。この現実を理解するためには、聖霊降臨のことを思い出さなければなりません。聖霊降臨の前、使徒たちは、私たちの主イエズス・キリストの友人でしたが、子どものように恐れていました。聖霊降臨のとき、聖霊が使徒たちの中に入り、霊的な成熟と力をもたらしたため、彼らは、迫害を恐れることなく、全世界にイエズス・キリストを宣べ伝えたのです。堅振のときに私たちの霊魂に起こることは、聖霊降臨のときに使徒たちに起こったことと同じなのです。
堅振の秘跡の効果
堅振の秘跡の第一の効果は、私たちの霊魂を、霊的な子どもの状態から、霊的な成熟の状態へと変え、その移行をしるすことです。洗礼によって、私たちは天主の子となりますが、そのとき、私たちの霊魂は、霊印と呼ばれる、消すことのできないしるしによって、天主の子であることがしるされるのです。堅振によって、私たちは霊的に大人となり、私たちの主の統治のために戦うことができるようになります。その時、私たちの霊魂は、もう一つの霊印、つまり、キリストの兵士としての霊印によって、この新しい状態にあることがしるされるのです。
堅振の秘跡の第二の効果は、成聖の恩寵を生み出すことです。堅振を受けた人は、私たちの主イエズス・キリストと、もっと一致するようになります。成聖の恩寵とは、天主の命にあずかることであることを思い出してください。しかし、天主は無限なお方です。ですから、私たちは、ますます深く天主の命にあずかることができるようになるのです。成聖の恩寵は、私たちの霊魂の中で、ますます増していくことができるようになるのです。
堅振の秘跡の第三の効果は、私たちが日々、自分の使命を果たすために必要な助力の恩寵を受ける権利を私たちに与えることです。堅振の秘跡によって、私たちはどのような使命を受けるのでしょうか? それは、私たちの主イエズス・キリストの統治を、まず私たちの霊魂の中に、次に私たちの家族の中に、そして私たちの周りの社会の中に確立するという使命です。
堅振の秘跡の第四の効果は、聖霊の七つの賜物を私たちに完全に与えることです。洗礼のとき、私たちはこれらの賜物を受けますが、それらを完全に利用することはできません。これらの賜物は、上智、聡明、賢慮、剛毅、知識、孝愛、天主への敬畏です。これらの賜物については、次の主日に、小野田神父様が詳しく話してくださるでしょう。
結論
親愛なる信者の皆さん、次の原則を忘れないでください。「秘跡は常に恩寵を生み出すが、私たちは自分の良い心構えに応じて、この恩寵を受ける」。ですから、私たちは、この秘跡を受けるために、よく準備しなければなりません。どのようにすればよいのでしょうか? 堅振の秘跡についての教会の教えをよく学び、良い告解をし、堅振の日までに聖霊へのノベナを行い、そして、生涯にわたって、あらゆる困難にもかかわらず、私たちの主イエズス・キリストにお仕えする固い決心をもつことによって、です。締めくくりに、このような良い心構えを示す短い実話をご紹介します。
中国でカトリック教徒が迫害を受けていたときのことです。10歳の中国人の少女が、司教に堅振を受けるのを認めてくれるように強く求めていました。司教は、少女があまりに幼いため、ためらいました。しかし、少女は、より一層、懇願し続けました。ある日、司教は少女にこう尋ねました。「堅振を受けた後、役人があなたを牢獄に入れ、あなたの信仰について尋ねたら、あなたは何と答えますか?」。少女はこう言いました。「司教様、私は天主の恩寵によってキリスト教徒です、と答えます」―「では、もし役人があなたに福音を捨てるように言ったら、どうしますか?」―「決して捨てません、と答えます」―「では、もし役人が処刑人を呼んで、あなたに、信仰を棄てなければ首を切るぞ、と言ったら? どう答えますか?」。少女は勇敢に、堂々と、こう答えました。「私はその役人に言います。首を切って、と」。
その信仰を見て、司教は少女の願いを受け入れ、堅振の秘跡を授けたのでした。