全英連参加者のブログ

全英連参加者の、言葉やその他諸々についての雑感... 不定期更新です。

必修の世界史履修せず

2006-10-25 21:19:28 | 気になる 学校の問題

=「受験に不要」と生徒-富山県立高

 富山県立高岡南高校(篠田伸雅校長、生徒数557)で、3年生の全生徒197人が、2年時に世界史など地理歴史教科の必修科目を履修していなかったことが24日、わかった。
 生徒の要望に応じ、大学受験に特化した授業を行ったためで、年度内に補習授業を行わないと卒業できない事態となっている。同校は同日、県教委に報告し、対応を検討している。
 同校によると、昨年度の授業内容を決める際、生徒から「受験に必要な科目以外は勉強したくない」との声が出たため、各教科代表の教諭でつくる会議で相談。篠田校長も了承し生徒に地理歴史教科の履修科目を選択させたところ、197人のうち165人が世界史を選択せず、残る32人は世界史A・Bのみを履修した。

 10月24日に読売他のウェブサイトで取り上げられていた記事だ。
 現在の3年生は平成16年度入学者である。平成15年度から高等学校は年次進行で学習指導要領の変更に伴い、各学校の教育課程が変更になっている。最初はその書き換え時期の、何かの事故と思った。でも、どうもそうではなさそうなことは、すぐにわかった。
 同校のウェブサイトを見ると、現在の2年生の教育課程表が掲載されていた。また、現在の1年生の教育課程(時間割)も見ることもできた。1年、2年を比較して見たが、平成17年、18年入学生の教育課程は少なくとも1年次に関して変更がないようだった。
 仮にこのパターンで現3年生も履修していたとして、2年次の地歴公民科の科目を見てみると、、、

 世界史A、日本史Aのどちらかを選択することになっている。これらは2単位科目である。
 世界史B、日本史B、地理Bのどれかを選択することになっている。これらは4単位科目であるが、2単位配当になっている。3年次に同じ科目を履修する。これが2単位または4単位の編成である。

 ①世界史Aと日本史Bまたは地理Bを履修する。
 ②世界史Bと日本史Aまたは地理Bを履修する。

 普通にやってれば問題ないはずである。

***** *****

 高等学校学習指導要領(平成11年3月告示、14年5月、15年4月、15年12月一部改正)にはこう決めてある。

 第1章総則
 第3款各 教科・科目の履修等
 1  必履修教科・科目
 すべての生徒に履修させる各教科・科目(以下「必履修教科・科目」という。)は次のとおりとし,その単位数は,第2款の2に標準単位数として示された単位数を下らないものとする。ただし,生徒の実態及び専門教育を主とする学科の特色等を考慮し,特に必要がある場合には,標準単位数が2単位である必履修教科・科目を除き,その単位数の一部を減じることができる。

 (2)地理歴史のうち「世界史A」及び「世界史B」のうちから1科目並びに「日本史A」,「日本史B」,「地理A」及び「地理B」のうちから1科目

 簡単に言えば、世界史1科目と日本史か地理1科目は必ず勉強しなければダメだということだ。

*****

 あくまでも、上記下線部のような前提であるが、165人は世界史を選択せずということなので、2時間分何かを勉強していたことになる。それは日本史Aか地理B。可能性としては前者だろう。日本史A+Bで4時間。地理は1科目2単位なので履修したものはいない。この生徒たちがもし今年世界史を履修していなければ、必修科目が未履修ということになる。
 32名は世界史だけを履修していた。この生徒たちがもし今年、日本史か地理を履修していなければ、つまり、また世界史Bを選択していたら、この生徒たちも必修科目未履修ということになる。

 この学校の教育課程を見ると、3年生でも2年生に履修した科目を選択することになっている。つまり、教育課程の履修条件を破って1科目しか履修していないのだから、地歴科目は1科目だけ…日本史を2年生で履修した生徒は日本史だけ、世界史を履修した生徒は世界史だけである。つまり学習指導要領違反である。

***** *****

 asahi.comに、昨年春(1年生3学期ごろ)生徒から「受験に必要な教科だけにしたい」との声があった。そのため、昨年度は3教科から1教科だけの選択でも可能とするようにした。
 …平成16年度にそう決めたことになる。この結果、世界史未履修で、3年生全員が卒業資格が現時点ではないことになっている。これは法令違反である。

 神戸新聞のウェブサイトにはもっと詳しくでていた。
 同校では生徒が2年生の時に、165人が日本史か地理だけ、32人が世界史だけの授業しか受けていなかった。県教委に提出する教育課程表では2科目の履修を計画。生徒指導要録上も2科目の履修を認定していたという。
 …つまり県に提出した教育課程表(カリキュラム)と実態が違っていたということだ。履修を認定したと言うことは、成績はどこから出てきたのだろう。日本史AとBを履修して、一つを世界史の成績にしたのかな。

 生徒指導要録は調査書(内申書)等対外的成績証明書の基礎基本である。その中の数値的データ(成績)は、各科目担当作成の成績表に記入され、クラス担任がそれに基づき成績一覧表を作成、職員会議(成績会議)で審議、形式的にも実体的にも校長先生の承認で公式のものになる。もちろん裁判じゃないので、承認決裁といってもそんな仰々しいものではなく、「〇〇の成績評価、おつかれさまでした。成績不振者への指導を一層よろしくお願いします。。。」等のコメントがあり、実際の仕事は動いていくものだ。ミスが許されないから、緊張する仕事である。
 成績は通信簿等に掲載され、保護者に渡される。年度末にそれらが、指導要録に記入される。そこには校長印が押され、1年が終わる。その記載事項に基づいて、3年生の担任は調査書を作る。数年前埼玉県で、特定の個人が担当部活動生徒の調査書の成績を改ざんして発行させ大問題になったことがあった。しかしこれは学校全体である。スケールが違う。担任は全員知っていたはずだ。校長も当然知っている。
 公立学校の校長は公務員である。公職である。この人は公印の監守責任がある。発行する文書に事実と異なることを記載し、それにハンコを押すと、いわゆる公文書偽造になるのではないか。
 これは、えらいことである。

 北日本放送のニュースにはこんなことが書いてあった。
 同校は全校集会などを開いて生徒に説明した後、記者会見を開く予定ですが、必修単位が足りなくなるという事態に高校側が気づかなかったことが問題となっています。
 …気がつかない? そんなことは絶対ない。必ずわかる。教頭や教務主任が気がつくはずだ。それが表に出ない以上、誰から気がつくことを抑えたか、表に出すことを止めたということだ。

***** *****

 学校が国の法律やそれに基づく指導要領を越えることができるわけがない。理屈がわからない高校生の受験生のわがままを、通しちゃった校長先生。。。もちろんわけのわからないことを言った生徒にも責任がある。だけど、それはダメなんだと言わない側にはより大きな責任がある。ダメだと決めればそれで終わりである。現場の教師の感覚では、ここまですごいことになったのは、生徒だけの要求とも思えない。選択科目の確認はどこの学校でも、保護者との三者面談で確認することだろう。1年生の時に何かがあったのだろう。でも、結果責任として認めちゃった校長先生は申し訳ないけど、判断ミスである。簡単に言えばおバカである。

 仮に世界史A(2単位もの)を履修させるとしても、50分授業で70回確保しなければならない。そんなことが報道されていたが、そんな単純な問題ではない。
 仮に朝から晩まで7コマ(同校は7時間目まである)授業を実施して、丸2週間世界史の授業だけである。3年生5クラス。350コマの授業を担当する世界史担当教師がこの学校にいるわけがない。これは物理的に見て不可能だ。まして、「受験に必要な科目以外は勉強したくない」と主張した(?)生徒集団が、これから受験シーズン本番になるのに、長期休業中や、2月以降の家庭研修期間中に学校に出てくるだろうか。無理ではないか。そうなると、卒業式も延期して、3月中よその学校から世界史の先生を借りて、全部授業をすることになるんじゃないか。

 さらに、問題なのは教員人事である。2年前から教育課程表と違うことをやっていたのだとすると、人員配置も何か問題が隠れているのではないか。
 校長先生。ひょっとすると、校長先生の職を解かれるかもしれない。

***** *****

 25日に読売新聞で読んだところ、ここまでわかってきた。

履修漏れは学校ぐるみ、県教委にウソ…富山・高岡南高

 同校は平成16年12月、国の学習指導要領に沿った「教育課程表」を県教委に提出していたが、授業内容を記す生徒指導要録には、実際には取っていない必修科目を履修していたかのように記録していたことが24日、わかった。県教委は要録の訂正と生徒の負担に配慮した補習の検討を同校に求める。
 篠田校長は県教委の聞き取り調査に対し、時間割と異なる授業をすることを教諭が生徒に説明。さらに指導要録には世界史、日本史、地理のうち1科目しか履修していないのに、もう1科目も履修したかのように単位を記録したと答えた。

 成績も「作った」んだろう。おそらくたとえば日本史A、Bのうち1科目を世界史Aの成績にしたのかもしれない。または2年生の地歴科目を1科目にしているのだから…4単位同じ教員が持っていたのだろうから…たとえば、日本史の成績と同じ評定にしていたのかもしれない。いずれにしても、ここまで話が表沙汰になった以上、受け取る側も、受け取れない。やはり調査書としては無効だろう
 11月1日以降の大学・短大の推薦入試。どうするんだろう。。。

 また、現校長先生は昨年4月着任とのこと。着任してみたら、自分の学校の2年生の教育課程の運用が法令違反だった。どうしようか考えて、1年半が過ぎてしまった。現在の2年生では法令通り(教育課程表通り)だと言うことは、現在の2年生または1年生から、自分たちの時は何でダメなのか、どこかに文句がいったので、判明したのかもしれない
 いずれにしても、どえらいことである。

 平成16年度の校長先生はどこかにご栄転か定年退職かわからないけど、この人の責任は現任者よりもさらに重い。
 今後どうするのかな。。。

 夜のニュースでは、12月いっぱいで補講を終わらせるという話と、モグラたたきではないがあっちでも、こっちでも同じことが判明し始めたことが報道されていた。さらに、一部既に卒業させてしまった学校もあるようだ。これは、明らかにシステムマルファンクション(機能不全)である。
 早急に対策を立てないとえらいことになる。


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TIU Forum Report

2006-10-25 04:34:27 | 教師の研修 2006

Announce_1  21日の土曜日、東京国際大学英語教育改革フォーラムに参加した。
 講演会とパネルディスカッションの2部構成で、いろいろと考えることが多かった。

***** *****

Tiu_forum_lecture 第1部は講演会
 講演者は文部科学省初等中等教育局主任教科書調査官(併)視学官(長い職名だ)の小串雅則さんである。現在実施している「英語の使える日本人」育成をめざした政策は5年間の期限付き、これが平成19年度で終了後、どうするのか。政策の実施状況の評価はどのように為されるのかという問題提起があった。政策が求めたものが、どの程度具体化できたことになるのか。学校種ごとの到達目標が、たとえば高校であれば、どの程度実行できたのか、どのように検証するのかの問題提起は、重いものだと思った。
 SELHiに指定された学校の成果が充分公表できているか、他校へ伝達され、共有できているのかということについては、不充分との考えのようだった。僕もそのとおりだと思う。まだまだやれることがやれていない。
 教科書についての発言もあった。OCIはかなりいいものになっているとの評価。OCIにR、Wの要素を別教科書で教えることができれば、英語授業はかなりいいものになるとの考えである。全英連参加者も英語I、IIとOCIを整理統合して、OCIの教科書に、もう少し読むことから発表につなげる活動で使える教材を入れていくことができれば、可能かと思う。次の教科書はイングリッシュⅠとかいう科目ができるかもしれない。
 小学校英語については、必修にするか否かはのぞき、教科にはしないことは決定済である等々。

 小串調査官は後3年で定年退職とのこと。本人はハッピーリタイヤメントをご希望のようだが、きっとどこかの大学教授になるだろうなあ。。。そんな感じがする。

Tiu_panel 第2部はパネルディスカッション
 パネルディスカッション司会は、以前このブログでも書いたけど、今年から東京国際大学の教授になった。新里眞男(言語コミュニケーション学部教授)先生。パネリストは、第1部講演者の小串雅則、鈴木啓修(埼玉県教育委員会指導主事)、郷野昌子(埼玉県立和光国際高校教諭)、武井澄江(埼玉県川越市立霞ヶ関東中学校教諭)各先生である。
 小串調査官からはCan-Do Listと進級・卒業認定に使うことの是非、鈴木指導主事から集中研修のこと、郷野先生からはSELHi指定3年目の国際高校の状況、武井先生から川越市の集中研修の実施についてそれぞれ発表があった。
 到達目標が高校として全部ひとくくりでいいものなのか、またSELHiに指定された学校の実践報告の情報伝達について、少なくともいつでもどこでも情報が見られるようにできないか質問した。

***** *****

 参加者大体50名。非常にもったいない感じがした。うち20名は会場校関係者(先生・学生)なので、外部参加者は30名ほど。もったいないなあ。。。
 今回出張になったけど、大学が県教委の後援をもらってくれていれば、もっと情報が教員の間に広まって参加者が増えたと思うんだけどね。 


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