秋の気配漂う上野の森。西洋美術館の開門前にもう一人の友人と合流して、今日は3人での鑑賞になりました。ハンマースホイ展は私が一番観たかった展覧会だったのでドキドキ。
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★「ヴィルヘルム・ハンマースホイ―静かなる詩情 」展 ― 国立西洋美術館
ヴィルヘルム・ハンマースホイは、デンマークを代表する画家。生前はヨーロッパ美術界で高い評価を得ていましたが、没後は、シュールレアリズムや抽象絵画の台頭などで、彼の具象的な絵画は時代遅れとみなされ、急速に忘れ去られていきました。近年また再評価が進み、国際的にも脚光を浴びている画家です。
以前見たこの後姿がずっと心に焼き付いていました。不可思議な空気が感じられる絵です。決して親しみやすくははないけれど拒絶している後姿でもない・・・。さみしい後姿でもない・・・。孤独をしっかり受け止めている姿かしら・・・。トレーをもった表情は・・・といろいろ考えてしまいます。
左は、国立西洋美術館がこの4月に購入したばかりの「ピアノを弾くイーダのいる部屋」で、後期傑作の一つと言われています。イーダは彼の妻で、彼女をモデルに繰り返し自宅の部屋を描いています。
がらんとした部屋には、なにか不安な感じをおぼえます。ピアノを弾いているのに音が聞こえません・・・。テーブルに灰皿はあるけど、なぜか生活感が希薄で・・・。そんなふうにして生まれる静かで謎めいた詩情が人の心をつかむのでしょうか。
フェルメールを手本にしているとも言われますが、抑えた色彩、最小限の調度品で、隅々まで計算しつくしていないこの絵の方が、却って心を打つ気がします。
代表作90点ほどを、イヤホンガイドを聞きながらゆっくり回りました。10時を過ぎると入館者が増え始めました。早く入館してよかった!
ここに来るたびに、常設展は必ず見ることにしています。14世紀からの絵画や彫刻など、松下コレクションや美術館が意欲的に収集した作品があります。
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★「大琳派展―継承と変奏 」展 ― 東京国立博物館 平成館
圧巻は「風神雷神図屏風」です。奇しくも、17世紀の宗達、18世紀の光琳、19世紀の抱一と1世紀ずつの隔たりを持って同じテーマで描かれたものが、比較しやすいように並べて展示されています。19世紀の鈴木其一の「風神雷神図襖」もあり、「琳派」が、どのように継承され変奏していったか、江戸文化の開花への道筋がわかります。
上は宗達の絵。国宝です。宗達の絵は、おおらかで威厳があって生き生きと力強く感じました。その力は屏風の外にまではみ出しています。3人の3枚の屏風を見比べると、やはりこれが一番好きな屏風です。
左は光琳、重要文化財です。宗達の絵を忠実に写した作品です。宗達にに比べるときらびやかな装飾性、色彩が鮮やかで絢爛豪華な感じがします。
いわゆる「琳派」は、血統でなく「私淑」により断続的に受け継がれた特異な形の流派だとか。「琳派」は1970年代以降に研究の成果つけられた名称だそうです。
ちなみに私淑とは、直接に教えは受けないが、密かにその人を師と仰ぎ尊敬し、模範として学ぶことだそうです。
左が抱一。抱一は繊細で軽妙。光琳を尊敬しながらも、花鳥風月の優雅な独自の「江戸琳派」に発達させていきます。
芸術は爛熟期に入ると、力強さが後退し典雅優雅に変わってくるのかなというのが感想です。
宗達が下絵を描き、本阿弥光悦が筆をとった新古今和歌集などのコラボレイトの作品もあります。
作品約240点・・・。会場は案の定混雑し、人垣が十重二十重。「琳派」はいつも人気沸騰の展覧会。さらに「大」がついた「大琳派展」だから、さもありなんです。また記録を作りそうです。美術館はゆっくり観たいものですが・・・。
今日の夕食は、洋風居酒屋。スペイン、イタリア、タイ…と多国籍の料理。帰りには、お土産にオーストラリアのオレンジをもらいました。
相当に痛めつけた足には、用意してきた湿布でケア。翌日はばっちり回復していました。