新・遊歩道

日常の中で気づいたこと、感じたこと、心を打ったこと、旅の記録などを写真入りで書く日記です。

「マリインスキー歌劇場管弦楽団」 ゲルギエフ & 五嶋龍

2019年11月30日 | 音楽
3か月前に手に入れていた待望のチケット、今年の私のチケットの中では一番高かった!なのにグスグスしていたのでバルコニー席しか空いていませんでした。14年前にサンクトペテルブルグの本場でチケットが手に入らなかった残念さが、いまだに尾を引いている「マリインスキー」です。
ゲルギエフ&マリインスキー歌劇場管弦楽団は13年前に福岡で聴きました。五嶋龍も4年前にフランクのヴァイオリン・ソナタを聴いています。
今回はその組み合わせが絶妙で、しかもチャイコフスキーだったので狙っていました。    

最初は「管弦楽のための協奏曲第1番 ・・・お茶目なチャストゥーシカ」作曲はシチェドリン。
普通とはちょっと違って、舞台の後方に並ぶ沢山の打楽器にびっくり!いきなり不協和音で始まったけど、軽快でどこか心地よい。ソ連時代の作曲は力強く、土着的で、ユーモアがあって、歯切れよいテンポにすっかり魅了されました。終わり方が実に気持ちいい。余韻を引く音でなく、大音量で「ジャン!」と鳴らした後、余韻の音を消してスパッと終わらせる、あと腐れがない終わり方に胸がスカッ!その見事さに「おーっ」とざわめきと歓声があがりました。
私には打楽器再発見です。人間の本能に訴えかけるような曲でした。音楽はメロディだけでなく、リズムとテンポが大切なのがよーくわかりました。
ゲオルギエフの左手の掌を蝶々みたいにヒラヒラさせる指揮。その意味のあるヒラヒラがとてもいいのです。指揮棒は割り箸ほどの小さめ。

意外だったのは、作曲家シチェドリンが「世紀のマドンナ」プリセツカヤのご主人だったことでした。芸術家同士の夫婦だったのです。
以前に、世界的なバレリーナが引退する前にひと目、とゲストで出演したプリセツカヤを観に行ったことがあります。美しかったー!歳を重ねても舞姫でした。

チャイコフスキー「ヴァイオリン協奏曲ニ長調」は五嶋龍演奏です。楽器は「ジュピター」。ずっと以前には「ジュピター」は樫本大進が使っていたような・・・。大好きな曲で、今回の演目に入っていたのも鑑賞する理由でした。

第1楽章でヴァイオリンが始まると決まって涙がこぼれます。哀愁に満ちて切ないほど美しいのです。
この章の演奏時間がかなり長く、しかも終わり方が最終章の最後の様な力強い終わり方をするので、それを勘違いしたお客さんから感動の拍手が(>д<)あーぁ、やっちゃったー!だめでしょー!
指揮者もヴァイオリニストも全身を使った演奏なので、ここで集中力を途切れさせないで第2楽章に入りたいはずです。演奏家の感情が害されないことを祈りました。
五嶋龍さんは戸惑ったように一瞬苦笑い😅。すぐに後ろを向いて次に移るためのヴァイオリンの弦を合わせていましたが、指揮者は・・・後ろ姿に拒否反応を感じてしまいました・・・。
途中の独奏ヴァイオリンの時にはステージの最前部に出てきて、オーケストラが静まったなかで、五嶋さんのヴァイオリンの超絶技巧が冴える世界が広がりました。40分弱の熱演でした。アンコール演奏は無し。あの熱演ではもう力は残っていないでしょう。

第2部は、ショスタコーヴィッチ「交響曲第5番ニ短調」
この曲はやはりコンサートで聞くべし!部屋で聴くにはあまりに壮大過ぎて、力強くてほとばしる情熱に圧倒されます。ここも打楽器が大活躍で、ソ連時代の有無を言わせない力強さを感じました。
第4楽章まであり、ずっと身を乗り出して(ほんとは身を乗り出して聴くのはNGなのですが後ろに席がなかったので)聴いていました。聴き終わって満足感と少し疲れも。
ゲルギエフは指揮台を使わずスコア無しで。前2曲はスコアをめくりながらの指揮でしたが、この曲に相当力を入れているのを感じました。
なぜか、指揮台にはコンサートマスターの女性バイオリニストが乗っかっていました。始めて見る不思議な光景でしたが、きっと意味があるのでしょう。

この日はアンコール演奏は無し。1階から3階まで満席1900席の割れるような拍手がありましたが、それを要求するのは申し訳ないほどに体力を使ったと思います。
ここで、海外では拍手だけでなくスタンディングオベイションで大いに盛り上がるところですが、日本のしかも地方の国民性とはいえ、この慎ましやかさには演奏家には物足りないでしょう。前方の特上席の人が立てば皆立つでょうが。後ろの方で立ってもあまり効果がないし・・・。

楽器の種類と数が今までとは違っていました。マリインスキー管弦楽団を入れ物として、かつてのソ連の力と芸術を閉じ込めて運んできた感じで、聴衆も大満足でした。
先月のコンサートに比べると年齢層が上がり、しかもきちんとスーツを着こなした男性客が多かった気がします。

バルコニー席は初めてだったけど「当たり」でした。斜め上からステージが俯瞰できて、各楽器の様子がよくわかります。演奏家の動きを見て、次はあの楽器が始まるなというのがわかります。オペラグラスで見ると、指揮者のスコアは細かい五線紙がびっしり書かれ、とても分厚かったです。
そうそう、前回より五嶋龍さんは一回り大きかった...。上から見下ろしたらラグビー選手みたいに胸板が厚く、色白のプリンスから「男性」に変身していました。

家に帰ってから、他の演奏家でしたが3曲をそれぞれ聴き直して余韻に浸りました。思い出に残るコンサートで大満足でした。

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