新・遊歩道

日常の中で気づいたこと、感じたこと、心を打ったこと、旅の記録などを写真入りで書く日記です。

ボッティチェリ 『美しきシモネッタの肖像』

2016年03月19日 | 美術館&博物館



『美しきシモネッタの肖像』。この美しい肖像に目が釘づけになったのは20年ほど前、画集の中。それはボッティチェリの解説にでてくるおとぎ話のように晴れやかな舞台の中でした。メディチ家の若武者ジュリアーノが馬上槍試合に勝利し、その頭上に勝利の冠を授けたのがフィレンツェ随一の美の女王シモネッタでした。二人は恋人同士でもあったのです。
メディチ家のフィレンツェは、まさに我が世の春の時代でした。その後ジュリアーノは暗殺され、シモネッタも病死・・・。
その絵を所蔵しているのが丸紅株式会社だと知ったのはずっとのちになってからのことです。
今、東京都美術館で「ボッティチェリ展」が開催中で、この絵も展示されていることはテレビで知っていました。

そんなある日、確定申告を終えた夫がその帰りに立ち寄った福岡市博物館で各地の展覧会のポスターを見て心を弾ませて帰ってきました。「ボッティチェリ展」と江戸東京博物館「レオナルド・ダ・ヴィンチ」展、森アーツセンター「フェルメールとレンブラント」展が時期を同じくして開催されているという情報でした。

ちょうど夫の誕生日に合わせて南阿蘇の温泉にでもと計画を立てていたので、東京に変更しようとあっさりと決まりました。そしてめでたくずーっと待ち望んでいたシモネッタの肖像に会いに行くことが出来たのです。

東京都美術館「ボッティチェリ展」 4月3日まで 



『ラ・プリマベーラ』も『ヴィーナスの誕生』も現地で2度見てはいましたが、今回は彼の絵につながる前の画家たち、芸術家としてのボッティチェリ、彼の弟子の時代、メディチ家の興亡、サヴォナローラの出現、と実に分かりやすい流れで展示されていてゆっくり回ることが出来ました。
時折り、辻邦生『春の戴冠』を思い起こしながら、こういう形でボッティチェリに接することが出来たのは夢のようでした。

国立西洋美術館「カラヴァッジョ展」  6月12日まで



カラヴァッジョと言えば、頭に花を飾った中性的な「バッカス」がまず頭に浮かびますが、彼の劇的な人生と合わせて五感、風俗、光、斬首とテーマごとの絵の展示となっており、実に内容の濃い展示がなされていました。
死の直前まで明と暗のドラマティックな人生を送り、それが深く影響を与えたのか色彩も人物の表情も深まっていくのがわかります。晩年の数年前の《エマオの晩餐》は胸に迫るものがありました。

彼が後世にいかに多くの影響を与えたか、継承者という意味の「カラヴァジェスキ」という言葉もあるほどです。カラバッジョに魅せられた画家たちはその画法を発展、波及させていきました。ろうそくの光に照らし出された神秘的な絵を描くあのジョルジュ・ド・ラ・トゥールもその一人です。

現存の真筆が少ないカラヴァッジョの絵が一堂にこれだけ集まることはなかなかありません。今迄知らなかったカラヴァッジョの多面性に触れられた印象的な展覧会でした。

宿は5つの美術館にアクセスの良い ホテルメトロポリタンエドモントに2泊。ポーチのシンプルな鉢植えとロビーの片隅のインテリアが私好みで、部屋に入る前から気に入りました。
 

ホテルのディナーブッフェのメニューは豊富でワインもおいしかったし、シニア割引がありラッキーでした。                       (3月15日 東京1日目)


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7 コメント

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Unknown (kazuyoo60)
2016-03-20 16:36:05
ワインですか。お好きな方は得ですね。
何時の時代も美人は得です。心映えも綺麗な方だったのでしょう。
ご主人様のお誕生日おめでとうございます。共通のご趣味で良いですね。
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まだ間に合いそう・・・ (花ぐるま)
2016-03-20 18:57:27
こんばんは~
私はだいぶ前にダヴィンチ展だけ行きました
その時に「ボッティチェリ展」のポスターを見ていました

ああ=まだ間に合いそう!!と思っていますが、忙しくてなかなか行けません
そのうちに行こうと思います

カラヴァッジョ展は6月までまだまだ大丈夫ですから

私のように日帰りができる身ですのでいつでも行ける、という油断もあります
ボッティチェリ爆是非にみたいです

ご主人の素晴らしい誕生日になりましたね
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至福の時を過ごされたのですね (くちかずこ)
2016-03-21 08:54:16
相変わらずの美術、絵画への造詣の深さには舌を巻きます。
別世界の方なんだなあ・・・と実感。
ご主人とも同じご趣味なのですね。
最初のシモネッタの肖像。
ちょっと、シャドーボックス的に食指が動きます。
ちょっと、くちこの好きなミュシャにも通じるイメージです。
くちこは、音楽にも絵にも縁のある人生なのに、なぜか全く貴女のような造詣と無縁なんです。
自分でも情けなくも不思議です。
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美術館めぐり (おばさん)
2016-03-21 21:31:49
息の合ったご夫婦の姿はお手本です
それにしてもお二人とも芸術に造詣が深く
無知な私はこちらでお勉強させてもらっています
ただいま 静岡県立美術館でも
ウィーン美術史美術館展・・・・風景画の誕生を公開中
愚息は行ってきましたが私は都合つかず
↓優しいご子息様ですね
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コメントありがとうございます (ちゃぐまま)
2016-03-23 19:32:54
◆◆kazuyoo60さんへ◆◆ byちゃぐまま
女性が女性を美しいという時は、大体気心の優しさも含まれていると思います。
画家もこんなに美しい女性を描く時は幸せでしょうね~。男性の描く肖像画には多分に
自分の理想も加えているのかもしれませんね。


◆◆花ぐるまさんへ◆◆ byちゃぐまま
《私のように日帰りができる身ですのでいつでも行ける・・・》なんと羨ましい言葉で
しょう!東京はたくさんの美術館が乱立し、展覧会の質も高いですね。めったない
機会です。ぜひボッティチェリをオススメします。


◆◆くちかずこさんへ◆◆ byちゃぐまま
シャドーボックスのシモネッタ、なかなかいいと思います。ヘアスタイルなんかミュシャに
似ていますよね。彼女の絵は他に数点描かれています。もう少し個性的なのもあります。


◆◆おばさん様へ◆◆ byちゃぐまま
ウィーン美術史美術館展は、来月からこちらにも巡回します。今から楽しみにしています。
この美術館は名品をたくさん収蔵しているとてもいい美術館です。パック旅行の時に
この美術館を夜に貸し切ってみるという夢みたいな経験もしました。
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とても素敵です (浜辺の月)
2016-03-24 23:59:13
こんばんは、ちゃぐままさん。
時々は伺っていたのですが、コメントを
久しぶりにします。
いい美術展へ行かれましたね。
ボッテチェリ、そしてカラヴァッジョ、どちらの
画家もわたしは好きです。
ちゃぐままさんほどには全然詳しくはないのですが、
いい絵がいっぱいです。
「美しきシモネッタの肖像」と「バッカス」の原画を
見られたなんて羨ましいですね。
そして更に羨ましいのが旦那様とちゃぐままさんの
嗜好が同じ方向なことが羨ましいです。
そして、ちゃぐままさんの旦那様お誕生日おめでとう
ございます。
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コメントありがとうございます (ちゃぐまま)
2016-04-01 21:14:03
◆◆浜辺の月さんへ◆◆ byちゃぐまま
「美しきシモネッタの肖像」を見ることが出来るなんて思ってもいませんでした。日本に
あることを知った時はびっくりポンでした。ある時写真で、企業の社長さんの背後に
その絵を見て驚きました。こんな世界的な絵は一般公開されていることが多いですが、
会社を訪れた人が、仕事のついでに社長室で見れるなんて贅沢な話ですね~。
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