新・遊歩道

日常の中で気づいたこと、感じたこと、心を打ったこと、旅の記録などを写真入りで書く日記です。

BSシネマより「スターリンの葬送狂騒曲」

2020年11月02日 | 映画
11月2日BSシネマより。タイトルのスターリンと聞いて暗い冷たい映画と思いきや、ブラックコメディの肩の凝らない重たくない映画でした。


冒頭、モーツァルトのピアノ協奏曲23番の美しく物悲しい第2楽章が響くコンサートホールが映し出されます。
そこで録音されたレコードを、スターリンは自室で聴いているうちに発作を起こし意識不明の瀕死状態に陥ります。連絡を受け集まった側近はパニック状態に。といっても悲しみにくれる者はいません。失禁したスターリンを運ぶ姿は政治のトップにある人でなく、そこら辺のおじさんです。
それぞれが自分が殺したと疑われないようにすぐには医者を呼ぼうとしません。尤も優秀な医者は既に粛清されており、かき集められた医者は冴えない医者ばかりです。
側近6人が責任が及ぶことを恐れて右往左往するさまがコミカルに映しだされ、それが表情の真面目さと噛み合わないところが可笑し味を誘います。

フルシチョフを葬儀委員長にして準備が始まりますが、亡くなった当時に居合わせた医者、使用人などを逮捕し粛清するところは見ていても背筋が凍ります。「粛清」は問答無用なんですね。

スターリンの後継者を狙って権謀術数が幾重にも渦巻き、裏では陰湿な取引がなされ、秘密警察トップのベリヤとフルシチョフの見えない戦いが起こっています。
フルシチョフはベリヤの排除に軍の元帥に協力を求め、幹部会の場で元帥はベリヤを銃殺、遺体に油をかけて焼却するという徹底したものでした。
サラサラになった黒い灰を無造作に取り扱うところを見て、体制の中にいる人の心は無機質なのかなとそら恐ろしさを覚えました。
その後フルシチョフは首相を他の人にやらせ、自分は第一書記として実権を握っていきます。

裏切っても、殺してでも、自分の勝利だけを願う・・・、品性も道徳心もなく、これは今にも通じるところがあり、痛烈な批判を込めているのでしょう。

2017年、面白可笑しい政治映画として欧米では大ヒットしたのに、ロシアでは上映禁止になったとか。

ロシアに行ったときに、日本語学科で学ぶ女学生から話しかけられました。留学の経験はないのに見事な日本語です。日系の会社で働きたいと夢を語っていました。
「ロシア」になって生まれた若者は、「スターリンは悪い人です」と切って捨てた言葉がとても印象的でした。

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