萬文習作帖

山の青年医師の物語+警視庁山岳救助隊員ミステリー(陽はまた昇る宮田と湯原その後)ほか小説×写真×文学閑話

Short Scene Talk 居酒屋某夜3―Side Story act.5

2013-11-23 22:10:16 | short scene talk SS
未来夜景@居酒屋、交錯



Short Scene Talk 居酒屋某夜3―Side Story act.5

「小嶌さん柚子ので周太がオレンジソーダな、倉田先輩はいつものジントニック?」
「あたり、お願いね?」
「宮田さん、ノンアルコールカクテルはここです、なんにしますか?」
「じゃあこれで(笑顔)」
「バージンメアリーですね、トマトジュース好きなんですか?」
「うん(笑顔)(やっぱコイツは普通に言えちゃうんだよな?でも周太が赤くなった可愛い、萌)」
「…(バ…ってまえにうちやまが真赤になったやつだよね光一からかって…いまはおれも意味わかっちゃう、羞)」
「お、周太もしかして今のバージンで赤くなってんだ?やっぱ初心可愛いよな、笑」
「…きにしないでおれのことは、それよりはやくちゅうもんしなよけんや?」
「いまタッチパネルしてるよ、笑」
「(なんかじゃれてる二人、なんか嫌だな、周太には言えないけど、泣 )」
「なんか手塚くんと湯原くんっていいコンビよね、可愛い、笑 宮田さん、湯原くん学校の外でもこんな感じですか?」
「仲良いヤツとだとそうですね、(笑顔)(っていうか賢弥がコンビってナニそれガッコでこんなじゃれてんのかよ周太、泣)」
「先輩、宮田くんと二人だと湯原くん、もっと可愛いんですよ?ね、宮田くん、」
「うん、そうだね(笑顔)(美代さんナイスフォロー、ほんと良い子だよな空気読めるっていうかさ?さすが光一の幼馴染だ、)」
「…そういうの恥ずかしくなるから、ね、美代さん?」
「あら、ほんとのコトだし仲良しは良い事よ?」
「ふふっ、小嶌さんと湯原くんって双子の姉弟みたいね?宮田さんも思うでしょ、」
「はい、似てるなって友達も言いますね、(笑顔)(それが寂しい時もあるし嫉妬もするんだけどね、)」
「やっぱ小嶌さんと周太ってお似合いですよね?なんで恋人にならんのか不思議、宮田さん的にどうすか?」
「そうだね、(笑顔)(余計なこと言うなバカ賢弥黙れ、)」




昨日UPした英二@東大農学部飲み会の続きです。

いま第71話「杜翳5」加筆ほぼ終わりました、読み直しながら校正する予定です。
そのあとAesculapius「Manaslu21」書いて、ここんとこUP順延中の不定期連載かなと。

取り急ぎ、




コメント (2)
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第71話 杜翳act.5―another,side story「陽はまた昇る」

2013-11-23 12:10:04 | 陽はまた昇るanother,side story
And think ye not with radiance more divine 瞬間の再会



第71話 杜翳act.5―another,side story「陽はまた昇る」

『 La chronique de la maison 』

全文フランス語のミステリー小説を祖父は書き遺した。

パリ郊外の閑静な邸宅に響いた2発の銃声。
そして隠匿される罪と真相、生まれていく嘘と涙と束縛のリンク。
そんな物語を披く詞書と贈り相手に向けたサインが意識ゆすらせ、今この窓辺に想う。

“Pour une infraction et punition, expiation” 罪と罰、贖罪の為に
“Je te donne la recherche” 探し物を君に贈る 

あの言葉たちが示す真実はどこにある?

「英二なら解ったでしょう?お祖父さんがなぜ小説を書いたのか…書かれたすべての証拠もあること、」

穏やかな声が自分の唇から告げて、切長い瞳が自分を映す。
父とよく似た瞳は真直ぐ自分を見つめて、けれど微笑の色彩は父と違う。
見つめあう静謐に木洩陽ゆれてダークブラウンの髪を艶めかす、その端整な微笑に周太は問いかけた。

「ね、英二…言わない事で俺を護れるって想ってくれてるのでしょう?」

問いかけて、けれど白皙の貌は動かない。
この貌から本音を惹きだしたい、言わせてあげたい。
そして少しでも分け合いたくて祈るよう周太は笑いかけた。

「秘密を背負わせてごめんね、ありがとう英二…でもね?」

見つめて、けれど切長い瞳は微笑の紗幕に本音を隠す。
この紗幕を払ってしまいたい、そう願うまま白皙の頬やわらかに引っ叩いた。

ぱちん、

「あっ、」

軽い音、けれど瞳の紗幕が落される。
長い睫ひとつ瞬いて切長い瞳が途惑う、その表情が可愛い。

―ほら、英二ってこんな貌もあるんだよね…子供みたいに素直な貌、

端整な貴公子のような美貌の英二、けれど素の貌は純粋に愛おしい。
こんな貌を知っているから憎めくて許してしまいたくなる、そんな相手に周太は笑った。

「英二、嘘を吐かないでって前も言ったよね、さっきも言ったでしょう?家族に秘密は要らないの、なのに嘘吐いたからおしおき、」

おしおき、だなんて本当に子供に話すみたい?
こんな言い方は大人の男に失礼だろう、それでも言ってあげたい。

―だって英二は子供の頃にきちんと叱られていないから…お母さんにも、お父さんにも、

きっと祖母の顕子は叱っていただろう、検事だったという祖父も孫息子に向きあったろう。
それでも両親と祖父母は違う、この違いのまま擦違う哀しみは英二のなかで拭えない。
だから少しでも自分が向きあいたい、そんな願いの真中で幸せな笑顔ほころんだ。

「おしおきって良いな、ね、周太?もっと俺にお仕置きして、俺の女王さま?」

なんか「おしおき」の意味が違う気がする?
そんな困惑かすめて、けれど笑顔が嬉しくて周太も笑った。

「そんな喜んじゃったら、おしおきにならないよ?…英二ってほんとに困るね、」
「周太に困ってもらうって俺、なんか嬉しいな、」

嬉しそうに笑ってブランケットごと抱きしめてくれる。
切長い瞳は底から明るく、真直ぐ綺麗に微笑んだ。

「周太、たしかに俺は嘘吐きな男だよ?でも周太への気持ちは嘘なんて一つも無い、絶対の約束も今だって俺は本気だ、」

嘘を吐いている、けれど気持に嘘は吐いていない。

こんな台詞は少し狡いのかもしれない、けれど本音だと解かる。
そして素顔の言葉だと解かるから受けとめたい、そんな願いに綺麗な低い声が響いた。

「自分の気持ちに馬鹿正直だから俺は光一のことも周太に話したんだ、そんな俺だから周太こそ独り抱え込んで病気になったんだろ?
もし少しでも俺を本気で好きだって想ってくれるなら周太、俺に吐きだしてよ?苦しいことも涙も何でも周太の運命に俺を巻き込んでほしい、」

低く響く声の想いは見つめる眼差しも告げてくる。
後悔も願いも偽らない、そのままに同じ時を生きようと願ってくれる。
共に泣いても生きたいと笑って、そんな瞳は自分を映したまま言った。

「周太、首を振って答えて?言葉にすれば違反だろうから、首を振って答えてくれるだけで良い、」

言葉にすれば規律違反になる、そんな職務と立場に自分たちは立っている。
それは違う部署でも同じ組織なら同じだろう、この現実ごと英二が微笑んだ。

「周太、SATの訓練は喘息にきついだろ?」

ことん、鼓動に敲かれ壁は破られる。

問いかけられた真中を切長い瞳が映りこむ。
その眼差しが懐かしい俤そっくりで、鏡のよう願いが反射する。

『家族に秘密は要らない』

さっき自分が告げた願いは父に叫びたい想い。
その言葉が父と同じ眼差しに微笑んで問いかける、その言葉に答えが言えない。

―もうSATの守秘義務を宣誓したのに…俺がいちばん嘘吐きだ、ね、

Yes、No、どちらを答えても職務違反には変わりない。
けれど答えなければ告げた願いに嘘吐くことになる。
義務と願い、この狭間に竦んだ自責から涙こぼれた。

「…英二、俺、」
「ダメだよ周太、言葉にしたら違反だろ?」

切長い瞳が笑って長い指が唇ふれてくる。
ふれる温もりに声を止められたまま綺麗な低い声が笑ってくれた。

「約束だよ、周太。俺はSATからでも周太を攫うよ、今から一年以内に周太を辞職させて療養させる、この約束を喜んでくれるなら頷いて?」

SATから、

そう告げられる言葉は言えない秘密ごと約束してくれる。
いま互いに秘密を抱いたまま見つめあう、それでも約束は結べる?

「晉さんの小説のことも親戚関係のことも、俺は周太に何も応えないし誰にも言わない、今はね?だけど時が来たら話したいよ、
その時が来るって信じてくれるなら今の約束に頷いて?俺が周太をSATから攫っても良いって許可して命令してよ、俺の女王さま?」

約束は受けとっても赦される?

家族なら秘密は要らない、そう願いながら自分こそ秘密を抱えこむ。
こんな自分こそ本当はいちばん嘘吐き、そんな自分だから英二の沈黙を破れない。
何も言わせてあげられない、共に背負うことも出来ない、けれど約束を頷くことは赦される?

「…さらって?」

赦されるなら頷きたい、そんな想いに言葉が動く。
唯ひと言に願い見あげる真中で白皙の貌は幸せに笑ってくれた。

「絶対に攫いに行くよ、周太?ちゃんと周太のこと攫うから、そしたら俺の嫁さんになってくれな?」

嫁になってくれ、だなんて男が男に言われたら怒るだろう。
こんな申し出を受けるだなんて一年前の自分なら想像つかない。
それでも今、この声に眼差しに言われる自分は嬉しくて、素直な想い微笑んだ。

「その約束ほんとうなら英二…きすして?」

約束は、叶う時まで「ほんとう」とは言えないだろう。
それでも約束を願う今の瞬間が真実なら「ほんとう」だと喜びたい。
そんな願いと見あげる木洩陽はダークブラウンの髪を黄金に梳く、この光彩が懐かしい。
金色ひるがえる森に秋は輝いた、あの幸福な時間に微笑んだ真中でまばゆい笑顔が接吻た。

「絶対の約束だよ、周太?大好きだ、俺の未来の花嫁さん、」

未来、そう告げられて信じたくなる。
約束の時は未だ来ない、それでも今この瞬間に信じたい。
この願いに重なる唇は深い森の香に温まる、その温もり微笑んだ狭間きれいな声が囁いた。

「…周太、絶対の約束ならキスだけじゃないよな?」

とくん、

鼓動ひとつ響いて、囁きの吐息が唇ふれる。






(to be continued)

【引用詩文:William Wordsworth「The Prelude Books XI[Spots of Time] 」】

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